著者
松田 時彦
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 = Bulletin of the Earthquake Research Institute, University of Tokyo (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.289-319, 1990-06-30

日本列島陸域の既知の活断層を,それぞれ独立して地震を起こす「起震断層」に再編成した.その際,次の場合を,それぞれ一つの起震断層とした: 1) 5km以内に他の活断層のない孤立した長さ10km以上の活断層, 2)走向方向に5km以内の分布間隙をもって,ほぼ一線にならぶほぼ同じ走向の複数の断層, 3) 5km以内の相互間隔をもって並走する幅5km以内の断層群, 4)その断層線の中点の位置が主断層から5km以上はなれている走向を異にする付随断層あるいは分岐断層.こうして得られた日本列島陸域(南西諸島を除く)のすべての起案断層をTable 3とFig. 3に示した.そして,その起震断層の長さLを用いて,その断層から発生し得る最大の地震のマグニチュードMLを,断層ごとにLog L(km)=0.6M-2.9の関係を用いて,算出した.一方,日本列島の陸域と周辺海域を,島孤系における位置,活断層や歴史地震の規模などに基づいて, 16の地帯に区分した(Fig. 4).陸域の各地帯において,その地帯内での最大のMLとその地帯内で生じた歴史地震の最大のマグニチュードMhとを比較し,そのいずれをも包含するマグニチュード(1/4刻み)をもって,その地帯で期待される最大地震のマグニチュードMmaxとみなした.ただし,地域内に例外的に大きなMLをもつ断層がある場合には,それを特定断層とよび,それが地震エネルギーを一括放出するか分割放出するかを,別途考慮することとして,各地帯のMmaxを考慮する際にはそれらのMLを無視した.海域については,活断層資料の精度が陸域と異なること,歴史時代に大地震を比較的頻繁に起こしていること,などから歴史時代の最大地震のマグニチュードをもって,その海域のMmaxとみなした.日本列島各地帯の最大期待地震規模Mmaxは次のようである(Fig. 5, Table 2). Mmax=8 1/2:東日本太平洋側沖合帯,西日本太平洋側沖合帯 Mmax=8:中部・近畿帯(西南日本内帯東部) Mmax=7 3/4:日本海東縁帯(東北日本内帯西部) Mmax=7 1/2:東北日本内帯主部,南部フォッサマグナ衝突帯,伊豆地塊,北陸帯,中国・北九州帯(西南日本内帯西部) Mmax=7 1/4:北海道中部衝突帯,九州中南部帯 Mmax=7:知床・阿寒帯,東北日本外帯,西南日本外帯 Mmax=6 1/2:千島弧外帯,北見帯 MLの最大値とMhの最大値は地帯によって大きく異なっていたが,同じ地帯では両者はほぼ同じ値を示している(Fig. 6).このことから,既存の活断層資料も歴史地震資料も,したがって上記のMmaxも,このように地帯区分した場合にはほぼその地帯の地学的特性を反映していると考えられる.

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