著者
阿部 勝征
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 = Bulletin of the Earthquake Research Institute, University of Tokyo (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.851-873, 1991-03-29

フィリピンのルソン島中部で1990年7月16日に発生した大地震(Mw7.6)について現地調査や波形解析を実施し,地震の発生機構を調べた.この地震はルソン島の地表に最大水平変位6mの地震断層を出現させた.それは島弧中央断層であるフィリピン断層系の一部である.地震断層の現地調査ではBongabonからRizar, Digdigを経てCapintalanまで実地踏査し,これらの地域を含めてDingalan湾よりImugan北方までを100km以上にわたってヘリコプターで上空より調査した.現地調査,地震波解析,余震データから得られたフィリピン地震の全体像は長大な左横ずれ断層運動である.断層面の走向は154°NE,傾斜角は76°Wであり,断層の長さは120km,幅は20km,断層面上での平均変位量は5.0mである.地震による横ずれ断層としては世界有数の規模である. TSKにおけるP波初動部分の変位記録は,震源での継続時間が約50秒あり,約10秒間の小さな立ち上がりに続いて2個の大きなサブイペントが約20秒の間隔で発生したことを示唆する.ラ・ウニオン州のルナで約2mの高さの津波が発生したが,局地的なもので,液状化に伴って生じたとみられる. 17日に発生した最大余震(Mw6.4)は逆断層運動によるもので,主断層運動の東側のブロックが断層の北端付近を圧縮したために起きたと考えられる.

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