- 著者
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田畑 きよみ
- 出版者
- 東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻
- 雑誌
- 言語情報科学 (ISSN:13478931)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, pp.141-157, 2013-03-01
幕末には多くの藩校で洋学を教授するようになった。それらの藩校が小学校へ継承された場合、後身校である小学校に、洋学教授法などの知的財産が引き継がれ、小学校での英語教育へと発展した可能性が考えられる。そこで本稿では、前身校での洋学教授の実績が小学校での学習内容に影響を及ぼした可能性を探った。また、明治初期の小学校英語教育においては地域の経済的豊かさが英語教育実施の大きな要因の1つと考えられたが、幕末期の藩校においても同様であるか確かめるために、洋学教授と経済力の関係を見た。この調査の先行的調査として、藩校からの継承校の追跡調査を行った。この調査結果から判明したことは、藩校を継承したのは、高等教育機関よりも小学校の方が多いということであった。幕末期の藩校において、そのことを示唆する教育制度の変化が見られ、それが、藩校が初等教育機関へと移行した一因と考える。洋学教授は小藩においても多くみられることから、藩の経済的豊かさが洋学教授実施の最大の要因ではないと思われる。そして、藩校での洋学教授実績が継承校である小学校での英語教育に引き継がれているかに関しては、それ程の影響力がないことが判明した。