- 著者
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香月 法子
- 出版者
- 人間文化研究機構地域研究推進事業「現代インド地域研究」
- 雑誌
- 現代インド研究 (ISSN:21859833)
- 巻号頁・発行日
- vol.1, pp.195-220, 2011-03
現在、古来より代々ゾロアスター教を信奉してきたインドのゾロアスター教徒、つまりパールシーが少子高齢化や女性の外婚増加等による、人口減少に悩まされている一方で、改宗によって、様々な背景を持ったゾロアスター教徒が世界中に200 万いるともいわれている。しかしパールシーにとって、このような教徒数の増加は、決して手放しで喜べる話ではない。それどころか改宗者やパールシー外婚女性に対する態度を巡って、「保守派」と「改革派」に分かれ、パールシー・コミュニティを二分する論争に発展している。これは18 世紀における度重なるコミュニティの分裂によって宗教的権威が衰退してしまったことで、彼らのゾロアスター教はヨーロッパの研究成果の影響を大きく受け、彼ら独自のゾロアスター教の確立が中断されたため、彼らのアイデンティティ形成に混乱が生じ、それが今になって「保守派」対「改革派」という対立構造となって表れているのである。