著者
NISHIOKA Karen
出版者
京都大学大学院人間・環境学研究科文芸表象論
雑誌
文芸表象論集 = Literary Arts and Representation (ISSN:21880239)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.29-43, 2016-12-31

アメリカ文学を代表する作家の一人であるウィリアム・フォークナーが、実は長期間にわたってハリウッドで脚本家として働いていたという事実はあまり知られていない。本論文では、フォークナーのマイナー作品 Pylon を取り上げ、ローラ・マルヴィーによるフェミニスト映画理論を援用した分析を試みることにより、フォークナーとハリウッドの関連について考察する。マルヴィーは、古典的ハリウッド映画は、観客から女優に対して向けられる視線の性質において、父権的イデオロギーを再生産する装置であると指摘している。筆者は、Pylon の男性主人公が他者に送る視線等の分析をすることにより、本作品における主人公と他の登場人物との関係性が、ハリウッド映画の女優と観客の関係性を模倣して描かれているということを発見した。さらに、小説のなかでこの関係性の最終的な破綻を描くことによって、フォークナーが Pylon 執筆を通し、自らが脚本家として働いていた1930年代のハリウッドで支配的であった、父権主義に基づく商業的構造を批判していたのではないかという可能性を考慮した。

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A must-read essay by Karen Nishioka on the film adaptation of Faulkner's Pylon. https://t.co/9qVYVQQqUr

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