- 著者
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森 亘
- 出版者
- 京都大学大学院教育学研究科
- 雑誌
- 京都大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13452142)
- 巻号頁・発行日
- vol.64, pp.71-83, 2018-03-30
本稿は二つの目的を持っている。一つ目は、ある転倒の後に私たちの世界を位置づけること、およびこの移行過程について論ずることである。本稿ではこの転倒を超越した世界の当たり前化と呼ぶ。二つ目は、神的なものや聖なるものを別の世界にイメージするプラトン以後の哲学者たちを、この転倒の後に位置づけることである。主要な論点は、「事物性(超越性)--内奥性」の運動を生きていた内奥秩序から、内奥性の放棄と人間中心主義の起源でもある超越した世界の当たり前化を導いた現実秩序への移行を捉えることである。この点は、原始的な意味での供犠を有していた社会から軍事秩序(帝国)への移行とも表現されうる。この転換点以後神的なものは、超越や理性の価値とのみ結びつくことになる。哲学史を視野におさめながら、原理的には軍事秩序と結びついて誕生したこの道徳を乗り越えていく準備作業を行うこともまた、本稿の目的である。