著者
植竹 勝治 山田 佐代子 金子 一幸 藤森 亘 佐藤 礼一郎 田中 智夫
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.1-5, 2014

都市部住宅地に生息するノラネコの健康状態および繁殖状況を確かめるため、我が国の代表的な大都市のひとつである横浜市の住宅地において疫学調査を実施した。調査では、繁殖データ(雌306匹)の収集と生化学および感染症に関する血液検査(雄雌計31匹)を行った。調査対象のネコは全て捕獲-不妊去勢-復帰プログラムの対象個体であった。不妊手術時に妊娠していた雌ネコの割合は4月に最高値(58.6%)を示し、3月から7月にかけて比較的高値を示した。平均一腹産子数(±標準偏差)は3.8±0.5匹であった。血液検査において対象個体の何頭かは基準値外の値を示したが、猫白血病および猫免疫不全の両ウイルス感染症は全頭陰性であった。これらの結果から、横浜市の住宅地におけるノラネコの血液性状および繁殖状況は、健康な家庭ネコに比較して、概ね良好であった。このことは、不妊去勢手術に基づくいわゆる「地域猫」活動を推進する上で参考になる。
著者
椙村 春彦 志賀 淳治 森 亘
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.171-180, 1987

ほぼ半年以上にわたり,臨床的に慢性肝疾患が存在したことが推定或いは病理学的に確認されている症例で,末期に劇症肝炎様の経過をたどり死亡し,剖検にふされた症例を病理学的に検討した.背景となる慢性肝疾患にはB型肝炎ウイルスキャリアー,慢性肝炎,肝硬変,バンチ病,ルポイド肝炎,アルコール性肝障害,トロトラスト沈着症があり,手術・輸血・アルコール多飲,重篤な感染症などを契機に劇症化していた.B型肝炎ウイルス陽性例の劇症化例で調べた範囲では組織中のデルタ抗原はみとめられなかった.病理学的には広汎性或いは亜広汎性の肝細胞の脱落が主たる変化であったが,循環障害性の要因が重要かと思われる地図状壊死,小葉中心静脈周囲のつよい壊死,血栓などが散見された.ステロイド長期投与,他臓器の血栓性病変,エンドトキシン血症などを勘案すると,肝における臓器型シュワルツマン反応として説明し得る症例もあった.
著者
森 亘
出版者
京都大学大学院教育学研究科
雑誌
京都大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13452142)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.71-83, 2018-03-30

本稿は二つの目的を持っている。一つ目は、ある転倒の後に私たちの世界を位置づけること、およびこの移行過程について論ずることである。本稿ではこの転倒を超越した世界の当たり前化と呼ぶ。二つ目は、神的なものや聖なるものを別の世界にイメージするプラトン以後の哲学者たちを、この転倒の後に位置づけることである。主要な論点は、「事物性(超越性)--内奥性」の運動を生きていた内奥秩序から、内奥性の放棄と人間中心主義の起源でもある超越した世界の当たり前化を導いた現実秩序への移行を捉えることである。この点は、原始的な意味での供犠を有していた社会から軍事秩序(帝国)への移行とも表現されうる。この転換点以後神的なものは、超越や理性の価値とのみ結びつくことになる。哲学史を視野におさめながら、原理的には軍事秩序と結びついて誕生したこの道徳を乗り越えていく準備作業を行うこともまた、本稿の目的である。