著者
得丸 公明
雑誌
研究報告音声言語情報処理(SLP)
巻号頁・発行日
vol.2011-SLP-86, no.16, pp.1-8, 2011-05-09

今日に至るまで,文法とは何か,文法のメカニズムはどうなっているのかということについて,十分に検討が行なわれたり,議論されたり,解明されることはなかった.デカルト派言語学を自認するチョムスキーが提起した難題「ヒトは状況に応じて新しい文を作ることができ,それをたった一度発話するだけで,聞き手がただちにそれを理解できるのはなぜか」を,生成文法論者を含めてまだ誰も解明できていない(1).チョムスキー自身は「この問題が人間の知的な能力の範囲内にはない」,「神の介在なしにはありえない」と述べている(2).だが,未解明の理由のひとつは,構造主義の「形態素」・「遺伝子型/表現型」概念と似て非なる「語形成素」・「深層構造/表層構造」という概念を用いるためではないか.また言語のメカニズムは社会科学でも自然科学でもなく,符号理論として取り扱うべきではないか.筆者は,ヒトの言語は脳内の自律的な神経細胞ネットワーク上で作動するデジタル通信システムであり,文法は情報源符号化と通信路符号化という二つのデジタル符号化メカニズムのシナジー(相乗)効果によって生み出された一連の機能を指し示す音響符号語であると考える.デカルトの結論に反して動物も論理装置や概念をもっており,ヒトのヒト以外の動物に対する質的相違は二重符号化文法に求められる.

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チョムスキーに「生成文法」という幻想をいだかせた神経細胞のデジタル・ネットワーク・オートマタにもとづく「二重符号化文法」 https://t.co/Kxvfc1NtoK

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