著者
古瀬 徳雄
出版者
関西福祉大学研究会
雑誌
関西福祉大学研究紀要 = The Journal of Kansai University of Social Welfare (ISSN:13449451)
巻号頁・発行日
no.10, pp.1-9, 2007-03

教会音楽の制作に携わる作曲家にとって,教会暦に従った典礼の機会に応じて作品を創り上げることは使命であった。そこには,聖書にあるイエスの心身の治療,信仰による奇蹟の救済の幾多の事例が取り上げられ,これらの福音書を創造の泉とし,宗教音楽の幾多の名作を生みだした作曲家は多い。J.S.バッハ(1685~1750) もその一人である。彼が所属するルタ一派教会において,その日の礼拝で朗読する福音書の章句に基づいて牧師の説教を行った後,関連する歌詞に作曲し演奏していったのが「カンタータ」である。バッハは聖書にある,さまざまな病を持つ患者をどのように捉えていたのか,彼の巨大な作品群から,「ハンセン病」の患者に対する癒しに絞り,現存する約200曲以上の「カンタータ」を調べたところ,「Aussatz」の語句そのものが登場している曲が2曲あり,また福音書聖句との関連する曲は5曲見つかった。そこには歌詞の語りかける深い表現,作品の構造の分析を通して,独立声部と通奏低音の織り成す周到な生地に,「ハンセン病」への思いが「苦難の解放」として,人知れず縫い込まれていることが浮かび上がってきた。それは,手本なしに生み出された独自の創造物であり,バッハのまなざしは,すでにこの時から,遥か先の現代を見通していたのではないだろうか.

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関連で、古瀬徳雄氏の「J.S.Bachの病めるものへのまなざし」『関西福祉大学研究紀要』 10(2007), 1-9 が私の関心に応えてくれて参考になりました。 https://t.co/EcmBmBfcCk

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