- 著者
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國吉 知子
Tomoko KUNIYOSHI
- 雑誌
- 女性学評論 = Women's Studies Forum
- 巻号頁・発行日
- vol.34, pp.1-20, 2020-03-20
本稿は2019年女性学インスティチュート連続セミナー「母なるものの役割」 において筆者が担当した「現代家族の中の母」をもとに加筆修正したものである。まず、現代の子どもと母親の置かれた状況について理解するために、幼稚園教諭から見た子どもの問題行動の実態調査の結果や、親子相互交流療法 (Parent‒Child Interaction Therapy:以下PCIT)に来談する母親が直面する子どもの問題行動への対処の困難感を紹介した。次に、筆者は「母なるもの」すなわち「母性性」について、養育者と子どもの心理的相互作用メカニズムに関する近年の脳科学の知見を援用し「母なるものの本質的機能」を再考し、さらに今井(2009)の研究をもとに父性と母性が、与える親の性別に限定されないことを指摘した。最後に、筆者が2013年から実施しているPCITについて解説し、子どもの共感性や自己制御能力を育成するために親がとるべき役割、行動について、母性・父性、ジェンダーの視点から考察を試みた。結論として、PCITは前半の子どもを受容する母性的機能、後半の子どもへの統制を行う父性的機能が構造化されているが、PCITは養育者の性別を問わないため、PCITを用いることで養育者のジェンダーにかかわらず母性性、父性性双方のバランスがとれた子育てが可能になることを示した。