著者
KAWASAKI Kenichi
出版者
GRIPS Policy Research Center
雑誌
GRIPS Discussion Papers
巻号頁・発行日
vol.16-27, 2017-01

地域統合の動向には深刻な不確実性が高まっている。英国は、EUからの離脱を決定した。米国の新大統領は環太平洋パートナーシップ(TPP)からの撤退に言及してきた。本論文の主な目的は、応用一般均衡世界貿易モデルを用いて、地域貿易協定(RTA)の代替的なシナリオの経済効果を定量的に比較することである。米国は、TPPから撤退すると、裨益しないばかりか、損失を被る可能性も推計される。日本との2国間の自由貿易協定(FTA)及び経済連携協定(EPA)の効果はTPPよりも小さくなる。中国やメキシコに対する米国の高い関税の課税は、中国、メキシコばかりか米国の経済厚生を著しく損なう。中国の東アジア地域包括的経済連携(RCEP)からの便益は、合意内容によっては、米国の関税の影響に比べて相対的に限られたものとなる。英国は、EUからの離脱によって損失を被るが、EU離脱のコストは、TPP参加の便益に比べて小さくなる可能性がある。総じて、関税削減に比べて、非関税措置(NTM)削減による所得効果はより大きなものとなることが示される。より大きな経済的な便益を享受するため、RTAの高い水準を達成する最善の努力が世界的に行われることが勧められる。

言及状況

Twitter (2 users, 2 posts, 0 favorites)

収集済み URL リスト