著者
江種 満子
出版者
文教大学
雑誌
文学部紀要 = Bulletin of The Faculty of Language and Literature (ISSN:09145729)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.1-25, 2007-03-01

1914年に朝鮮から留学したナ・ヘソク(羅蕙錫)のエッセイと小説を通して、1910年代の日韓の政治状況及び文化状況の交点に照明を当てる。1910年代は、明治国家主義を推進した明治第一世代に抗して、個人の価値に立脚して世界をとらえようとする第二世代の言説、すなわち<白樺>・<青鞜>・アナーキズム等の個人主義の思想が主流化する。その中で、有島武郎は白樺派としては異例の存在として、インターナショナルな視点をアメリカ留学と社会主義の研究によって獲得し、1910年の韓国併合に至るまでの日本の朝鮮・韓国支配に対して鋭い国家批判を抱懐していた。有島に比べると、一見、インターナショナルな視点をもたなかったかに見える白樺派の武者小路実篤や志賀直哉たちだが、実際には、彼らは明治第一世代がとらわれた国家意識や国民意識を離れ、国家と個人の関係を革命的に逆転させる仕事をした。ナ・ヘソクの自己形成は、このような第二世代の言説が燃え上がる時期に留学したことを抜きにしては、考えられない。とりわけ<青鞜>の平塚らいてうが描いた「太陽」の表象が、彼女をインスパイアした。

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