著者
青木 純一
出版者
文教大学
雑誌
生活科学研究 = Bulletin of Living Science (ISSN:02852454)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.227-237, 2017-03-30

本稿は学校で宿日直が始まる明治中期と、廃止へと向かう終戦後の一時期を中心に、その目的や背景を明らかにした。学校に宿日直制度が成立するきっかけは天皇の写真、御真影の「奉護」が目的である。1890(明治23)年頃になって国家主義的な風潮が強まる中、学校に御真影が「下賜」されその「奉護」を目的に各地の学校で宿日直が始まった。宿日直が定着すると、学校は夜間や休日でも比較的訪れやすい場所となる。宿日直を通して教員同士や児童生徒、地域住民との交流もしだいに増える。戦後になって御真影や教育勅語がなくなると、学校施設の管理のみが宿日直の目的となる。時代の変化もあって、しだいに廃止を要望する声が高まり、宿日直教員に対する殺人事件や暴行事件をきっかけに宿日直廃止の動きは大きく広がる。宿日直問題は国会でも取り上げられ、警備員配置のための国の予算が付く1960年代後半になると、宿日直の実施率は急速に低下し、1980年代の初頭にはほぼ全国の学校で廃止された。

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