著者
辻下 聡馬 涌井 忠昭
出版者
奈良学園大学
雑誌
奈良学園大学紀要 = Bulletin of Naragakuen University
巻号頁・発行日
vol.12, pp.159-165, 2020-03-10

高齢化とともに平均寿命と健康寿命との差が課題となっている。この差を短縮することは高齢者の生活の質を高めるだけでなく、社会保障費の削減も期待できる。健康寿命の延伸に向けて高齢者が運動や健康づくりを行う際には、人生の目的を考え、そのうえで実施可能な運動や活動を行っていく必要がある。高齢者の運動や健康行動の変容に関する研究では、外発的・内発的動機づけの有効性や、運動がQOLの向上に及ぼす影響などについての報告は見られるが、高齢者の人生の目的に着目し、人生の目的と健康状態、生きがいおよび肯定的な感情との関連性に関する研究は筆者らの知る限り見受けられない。そこで本研究では、高齢者の人生の目的と生きがい、前向きな態度および健康関連QOLとの関係を明らかにすることを目的とした。調査対象および方法としては、大阪府A区に居住する65歳以上の高齢者で、老人会の運営を行っている18名(男性15名、女性3名)に対して、人生の目的、生きがい、前向きな態度および健康関連QOLに関する質問紙調査を行った。その結果、健康関連QOL(SF-8日本語版)における身体的サマリー(身体的QOL)と精神的サマリー(精神的QOL)、生きがい、前向きな態度の値は、人生の目的の高い群が低い群より高値を示し、身体的サマリーのみ高い群が有意に高い値を示した(p<0.05)。人生の目的が高い者は、健康的な行動を促進し、健康に対する肯定的な意識が高いと示唆された。高齢者が人生の目的を高く持って運動することは、健康寿命の延伸の一助になると推察される。

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