著者
鶴田 武志
出版者
名古屋短期大学
雑誌
名古屋短期大学研究紀要 = BULLETIN OF NAGOYA COLLEGE (ISSN:0286777X)
巻号頁・発行日
no.59, pp.55-79, 2021-03-15

子殺しをテーマに高度経済成長期の男性の願望の顛末を描いた松本清張「鬼畜」は、その願望の裏側にある女性への一方的な甘えの構造を転倒させることで日常にある陥穽を炙り出す恐怖小説だった。野村芳太郎は、そんな原作の非情な世界観を人間の弱さと恐ろしさ、そして父子の絆を描くヒューマニズム映画へと仕立てた。結果、映画「鬼畜」は、同じく親子愛の映画「砂の器」(1974)に連なる系譜として完成し、霧プロダクションへの決定打となった。しかし、映画「鬼畜」には、正妻と愛人の対決と正妻の子どもらへの過酷な仕打ちという前半の衝撃と親子愛の結末とが巧く嚙み合わないという分裂を抱えていた。この分裂は、「砂の器」に代表される人間主義と「八つ墓村」に代表されるセンセーショナルさ、相克するその二つが1970年代の野村に期待されるものだったからこそ起きたことである。そして、映画「鬼畜」に大衆が望んだのは、前半の過剰なまでのセンセーショナルさだった。大衆の欲求に敏感な野村の在り様は、自作の映画化にヒューマニズムを求めた清張との間にやがて大きな決裂を生む。映画「鬼畜」は、霧プロ設立前から二人の決裂を予見していた映画だったのである。

言及状況

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#松本清張 #鬼畜 に関して、一筆書いております。 副読本的に読んで頂けると幸いです。 「松本清張「鬼畜」と松竹映画「鬼畜」(1978) の断層 ー清張作品を人情ものにー」 リンク先は↓ https://t.co/qpB4DvLM2w
@purissima_bear 初めて見たとき(小学生)、幼心に何故、この男(緒形拳)はこんなに恐い奥さん(岩下志麻)がいるのに、こんなに怖い女性(小川真由美)を愛人にするのか不思議でした。 でも昨年、書いた論文は真面目に書いています↓ https://t.co/qpB4DvtCOo
清張没後30周年ということでBS朝日は連日 #松本清張 のドラマを放送していますが、昨日放送の #玉木宏 主演『鬼畜』には、1978年の緒形拳版が映像化のベース。 どう作られたかを明らかにする一筆を書きました。ご興味ありましたら是非。リンク先は以下↓ #鬼畜 https://t.co/UJ9wEeMq2i
10月7日『鬼畜』(1978)劇場公開日。 43年になる今年、本作の松竹映画の位置、野村芳太郎監督と松本清張との関係などを書きました。 ご興味あらば以下のリンク先に是非。 https://t.co/UJ9wEeMq2i https://t.co/SIQ8G0dyGr
@tsuboiatsushi 『鬼畜』でトークなさることがあれば、是非、拙稿を副読本的にご使用頂けたら幸いです。 映画についてもかなり考察しておりますので。 https://t.co/qpB4DvtCOo
@atsi_kobayashi 大変遅くなりましたが、本日、ようやく拙稿がリポジトリで公開になりました。ご著書のおかげで書けたようなものです。 不躾ですがお読み頂けたら幸いです。 https://t.co/qpB4DvtCOo https://t.co/3435XT4Yhc
拙稿『松本清張「鬼畜」と松竹映画「鬼畜」(1978) の断層 ー清張作品を人情ものにー』 がネット公開されました。 ある俳優が使用した撮影台本や宣材などの資料をもとに読み解きました。お読み頂けますと幸い。 #松本清張 #野村芳太郎 #鬼畜 #緒形拳 #岩下志麻 #松竹映画 https://t.co/UJ9wEeMq2i https://t.co/E8pwNUN3xv
『松本清張「鬼畜」と松竹映画「鬼畜」(1978) の断層 ー清張作品を人情ものにー』 なる拙稿がネット公開されました。 ある俳優が使用した撮影台本などの資料をもとに読み解きました。お読み頂けますと幸い。 #松本清張 #野村芳太郎 #緒形拳 #岩下志麻 #松竹映画 https://t.co/UJ9wEeMq2i https://t.co/F1mYg6oBjB

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