著者
加藤 新太郎
出版者
中央ロー・ジャーナル編集委員会
雑誌
中央ロー・ジャーナル (ISSN:13496239)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.3-28, 2017-06-30

民事訴訟において刑事判決の理由として認定された事実に反する事実を認定することは妨げられない。このことは、裁判の独立、両者の証明度の差異など原理的観点から正当化されるが、民事事実認定と刑事事実認定とが乖離する場合には、相応の論拠が求められる。実際には、刑事訴訟で被告が有罪となった場合には、刑事訴訟の方が民事訴訟よりも事実認定における証明度が高いことから、民事訴訟にも影響が大きく、証拠関係が大きく異なることがなければ同様の事実認定(民事責任も積極)がされることになる。これに対し、刑事訴訟で被告が無罪となった場合には、刑事無罪判決(その事実認定)は、その方向を示す有力な間接事実とされるが、直ちに民事訴訟においても責任なしとなるとは限らない。しかし、民刑それぞれの事実認定は異なっても差し支えないという原理を硬直的に捉えた審理判断であってはならない。個別ケースの当てはめにおける法的吟味・経験則の適用の適否や証拠評価の不徹底に起因するものは論外である。両者で認定・判断が異なり、ひいては結論が生じるケースについて、それが生じる契機となる要因をみつけ、相応の論拠のない乖離を可及的に発生させないようにする解釈論・運用論を確立することが必要である。

言及状況

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@netsensor1 @cocoro1931 @Sankei_news 私は法の専門家ではないので、個々の事件について真偽を議論する意思はありませんが、民事訴訟と刑事訴訟で判決が乖離することはよくあります。 裁判官の思惑と判断するのは早計かと思います。 この辺に詳細がまとまっているのでご一読を。 https://t.co/JhJqv2uxm4
元TBS記者に賠償命令 伊藤詩織さん勝訴、性暴力認定―東京地裁 https://t.co/5NnsxZyarM 民事と刑事では事実認定は独立しています。 なので刑事事件の方もやり直せは別問題です。 詳しくはこの論文をどうぞ 民事事実認定と刑事判決との関連 https://t.co/R6cJX5NhcY

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