著者
Jin Chunjie Nakanishi Tetsu Ogasawara Hiroshi
出版者
日本花粉学会
雑誌
日本花粉学会会誌 (ISSN:03871851)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.23-29, 2004-06-30
参考文献数
9
被引用文献数
1

我々はこれまでにスギの雄花分化が梅雨明け後の気象条件により誘導されることを報告し,梅雨明け後の気象データを用いた雄花着花量の予測式を検討した.スギ雄花分化時期は6月下旬〜9月上旬と言われている.六甲山における1999〜2003年までのスギ雄花分化の観察によると異常気象となった2002年は6月上旬という早い時期に雄花が分化した.そこで梅雨明けが早まった場合の予測式で丹波山地の着花量を計算すると6.14が得られ,実測値の6.37と非常に近似した.一方,従来法による7月の気象データで雄花着花量を求めると1.91と実測値との差は極めて大きかった.このことからスギ雄花数の予測は異常気象下であってもスギ緑枝の組織観察法により花芽分化を誘導する時期を推定し,その時期の気象解析によって精度の高い予測が可能であることが示された.
著者
須藤 礼子 須藤 守夫 神崎 絵里 雑賀 優
出版者
日本花粉学会
雑誌
日本花粉学会会誌 (ISSN:03871851)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.61-68, 2008-12-31
被引用文献数
1

4月はじめから7月上旬に盛岡市中心部で測定される空中飛散イネ科花粉の花粉源とその割合を推定するため,2006年と2007年の2年間盛岡市中心部の植生調査をした.また,2007年に調査地で開花が確認された10草種それぞれの1穂当たりの花粉数の計測も行った.2007年の植生調査による開花穂数の計測結果から,調査地1m^2内に開花するイネ科植物は10草種819本が確認され,ハルガヤが47%,オニウシノケグサが19%,カモガヤとナガハグサがそれぞれ13%で,4草種で開花穂数の92%を占めた.植生調査地で開花が確認された10草種について小花数と小花内にある葯数,および1葯内に含まれる花粉数の計測を行った.計測した値から1穂あたりの花粉数を求めると,開花の多かった4草種の花粉数は,カモガヤ17.28×10^6個,オニウシノケグサ9.10×10^6個,ナガハグサ1.61×10^6個,ハルガヤ1.28×10^6個であった.植生調査で得た10草種の開花穂数に,1穂当たりの花粉数を掛け合わせ,盛岡市中心部における単位面積(1m^2)当たりで4月1日から7月10日までに,4304×10^6個の花粉が生産され,草種割合は44%がカモガヤ,34%がオニウシノケグサ,11%がハルガヤ,4%がナガハグサ,7%がその他の草種であると推定できた.