著者
野上 雅弘 坂本 浩 永井 輝行
出版者
福井県園芸試験場
雑誌
福井県園芸試験場報告 = Bulletin of the Fukui Prefectural Horticultural Experiment Station (ISSN:09105387)
巻号頁・発行日
no.11, pp.9-26, 2000-02

ロゼット化および開花の特性が品種によって著しく異なるトルコギキョウについて,特別な処理を行わなくても,夏から秋にかけて高品質切り花が収穫できる品種を選定することを目的として二三の実験を行った。1. 3月24日に播種を行った場合,開花期は8月上旬から下旬となり,ロゼット化する品種はなかった。切り花長,切り花重,有効花蕾数といった品質に基づいて判断すると,8月上旬の収穫では'若紫','白雪',8月中旬では'F1あずまの朝','F1キングオブスノー','F1あずまの波','F1ロイヤルライトパープル','F1キングオブライラックローズ','F1あずまの銀河','ミスライラック','天竜乙女','F1キングオブホワイト','グローリーパープル','ホーリースモールレディ','天竜ホワイト',8月下旬では'桃の誉','フレッシュホワイト'および'ホーリーバイオレット'が適品種であった。2. 5月18日の播種では,9月下旬に開花する品種と10月に開花する品種とがあった。また,播種期を6月8日に遅らせると,開花期は11月中旬から12月下旬となった。この作製では,供試したほとんどの品種でロゼット化が起こったが,その程度は品種により著しく異なった。6月播種では,5月播種に比べてロゼット化率が概して大きかったが,いくつかの品種は,播種日に関係なく,相対的に安定したロゼット回避性を示した。切り花品質とロゼット回避性に基づいて判断すると,9月下旬の出荷には'F1あすかの朝','ニュースモールレディ','F1サンパープル'がよく,10月上旬の出荷には'F1あすかの粧','F1あすかの桜','F1ハイセンスパープル','マイテレディ','F1あすかの紫','F1サンホワイト'が,10月中旬の出荷には'マイテスカイ','F1クイーンオブローズ','F1サンピンク','F1ベガバイドリーム','F1サンニューパープル','F1つくしの霧'が,10月下旬の出荷には'F1サンコーラル','マイテピンク','ホーリーホワト3号'が,また,11月上旬の出荷には'F1スーパープリマドンナ'がそれぞれ適品種で,播種適期はいずれの品種も5月中旬である。但し,確実にロゼット化を回避したい場合には,'F1ハイセンスパープル','F1ベガバイドリーム'および'マイテピンク'を利用するのがよいと思われる。しかし,6月播種による11月以降の収穫は,切り花品質が低くロゼット化率が高くなるため実用的ではないと思われる。3. 'F1ハイセンスパープル','F1サンホワイト','F1ベガバイドリーム','F1つくしの霧'を1996年4月18日から5月24日の間に5回に分けて播種し,9月に収穫を行うための播種適期を検討した。しかし, 5月中旬播種の場合の開花期は1995年より1ヵ月以上早まった。アメダス気象データによると1996年は1995年および平年に比べて特に7月の日照時間が多かったことから,この作型では梅雨期の日照時間が開花期に大きく影響することが示唆された。このため,9月収穫のための播種期は判然としなかったが,おそらく4月上旬から5月上旬であると思われる。
出版者
福井県園芸試験場
雑誌
福井県園芸試験場報告 = Bulletin of the Fukui Prefectural Horticultural Experiment Station (ISSN:09105387)
巻号頁・発行日
no.13, pp.1-8, 2003-03

1.種子親(♀)'新平太夫'に花粉親(♂)'織姫'を1983年に交配し,樹勢が強く,豊産性で,一次加工に優れた早生系のウメ新品種を育成した.3.開花盛期期は育成地(福井県三方郡美浜町)において3月10日と'新平太夫'や'紅サシ'より3~4日早い.花弁は白色,花弁5枚で,不完全花の発生は少なく,自家結実性は'紅サシ'並に高い.3.発芽期は3月下旬で'新平太夫'並に早く,成熟期は6月中旬で,'紅サシ'より10日,'新平太夫'より約2週間早い.4.果実は豊円形で,果実重が30g前後の中玉である.果肉歩合は93.5%と高い.5.果皮の地色は濃緑色で'新平太夫'に比べて濃いが,成熟期には淡黄緑色となり,陽光面は淡紅色に着色する.果面の毛じはやや多く,光沢は少なく'織姫'と同程度である.6.核の大きさは中で,表面は点状,やや平滑,粘核で,核形指数が0.92と高く丸みを帯びる.7.青果,一次(塩漬)加工製品のいずれにおいても果面および果肉内に樹脂障害果の発生はまったくみられない.