- 著者
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笠井 勝子
- 出版者
- 文教大学
- 雑誌
- 文学部紀要 = Bulletin of The Faculty of Language and Literature (ISSN:09145976)
- 巻号頁・発行日
- vol.19, no.2, pp.19-62, 2006-03-01
ルイス・キャロルは『不思議の国のアリス』を出版して1 年半後の1867 年にロシアへ旅行をした。その時の旅行日記を翻訳し、また現在と当時の生活や習慣の違いなどによって説明が必要と思われる事項にはできるだけ注を付し注釈付き翻訳とした。翻訳に先立つ序のなかでは、旅行をすることになった経緯と、一緒に旅をしたヘンリー・パリー・リドゥンとキャロルとの関係、またリドゥンの宗教上の立場などについて解説した。この旅行日記ではその頃の英国の大学人が初めて外国を訪れて出会った驚きがユーモアを交えて語られていて、キャロルが普段つけていた日記とはちがい読み手を想定していることが窺える。事実キャロルの死後に他の日記は親族の手を経て大英図書館に入ったが、旅行日記はそれとは別に米国へ渡り、単独であるいは他の作品と一緒に全集の中に印刷されてきた。ロシア語を知らなかったキャロルはロシア語の僅かな単語だけで話を通じさせようとしている。キャロルがメモしたロシア語の一部には彼の勘違いもあると指摘を受けたので注に記しておいた。