著者
亀山 裕樹
出版者
日本社会福祉学会北海道地域ブロック / 北海道社会福祉学会
雑誌
北海道社会福祉研究 (ISSN:13424378)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.35-47, 2021-03-31

本研究の目的は,日本におけるヤングケアラーをめぐる議論において,どのように貧困が言及され,どのような点で貧困の視点を抜け落としやすい議論の組み立て方が取られているかを明らかにすることである.まず,貧困への言及という観点から議論の展開を整理した.続いて,「日本ケアラー連盟ヤングケアラープロジェクト」の澁谷らによる議論を一例として取り上げ,文献資料に基づき,いかにして貧困の視点が抜け落ちるかを検討した. 澁谷らは,ヤングケアラーと貧困に応じてケアを担う子どもの混同を懸念し,ケア経験を肯定的に意味づけていた.これらに焦点を当てる際,一方で貧困の視点の抜け落ちを防ぎにくい.それゆえ,貧困などによりケアの担い手が不足し子どもがケアを担うという構造が議論から結果的に抜け落ちると示唆された.この結果を踏まえたうえで,家族に障害や病気がなくとも貧困に応じてケアを担う子どもをどう捉えるかという課題を提示した.