著者
渡邊 真央人
出版者
北海道社会福祉学会
雑誌
北海道社会福祉研究 (ISSN:24240028)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.13-19, 2017-03-31

ここ数年,生活保護改革の中で,様々な生活保護基準が引き下げられ,一部の加算は廃止された。しかし,一連の改革の中で,障害者や母子家庭の親などに対する生活保護費の加算の意義はあまり議論されていない。廃止された老齢加算などについて,学説は,廃止そのものに批判的な見解,廃止に理解を示しつつも生活保護基準全体の見直しを同時に行う必要性があることを指摘する見解など,様々なものがある。報告者は,加算の存在意義は,生活保護法の趣旨を踏まえ,継続的な特別需要がある人々の最低生活を保障するところにあると考える。そして加算額の根拠は,生活保護基準の妥当性という視点から包括的に捉えて見直す必要があると考える。また,生活保護制度では特別需要を補うものとして一時扶助もあるが,それは継続的な特別需要を補うものではないため,加算と一時扶助が補う特別需要が異なることを明確にして生活保護制度を運用していく必要がある。
著者
亀山 裕樹
出版者
日本社会福祉学会北海道地域ブロック / 北海道社会福祉学会
雑誌
北海道社会福祉研究 (ISSN:13424378)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.35-47, 2021-03-31

本研究の目的は,日本におけるヤングケアラーをめぐる議論において,どのように貧困が言及され,どのような点で貧困の視点を抜け落としやすい議論の組み立て方が取られているかを明らかにすることである.まず,貧困への言及という観点から議論の展開を整理した.続いて,「日本ケアラー連盟ヤングケアラープロジェクト」の澁谷らによる議論を一例として取り上げ,文献資料に基づき,いかにして貧困の視点が抜け落ちるかを検討した. 澁谷らは,ヤングケアラーと貧困に応じてケアを担う子どもの混同を懸念し,ケア経験を肯定的に意味づけていた.これらに焦点を当てる際,一方で貧困の視点の抜け落ちを防ぎにくい.それゆえ,貧困などによりケアの担い手が不足し子どもがケアを担うという構造が議論から結果的に抜け落ちると示唆された.この結果を踏まえたうえで,家族に障害や病気がなくとも貧困に応じてケアを担う子どもをどう捉えるかという課題を提示した.