著者
太田 真由美
出版者
弘前学院大学
雑誌
弘前学院大学看護紀要 (ISSN:18808867)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.99-103, 2006-03-31

「森のイスキア」を主催し,スピリチュアルケアを実践している佐藤初女さんの活動は悩みを抱える人の話を聴き,手作りの料理を共に食べるだけである。にもかかわらず,癒される。彼女の心がけていることは,あるがままのその人を受け入れ,話を聴き,共感すること。もうひとつは,心を込めて料理を作り,食べてもらうことである。スピリチュアルケアにおいては,日常的な行為に対するケア提供者の態度や取り組む意識が基本とされる。エイミー・ミンデルは,ケア提供者は,あらかじめ持つべき感情を押し付けるのではなく,理想的態度を持つ人間に湧き上がる,そのときどきの思いや感情を相手に役立つように自覚的に行動に移していくことが重要と訴える。特別なことをしていなくても,イスキアで癒されるのは,佐藤さんの気遣いや優しさといった資質を,態度や行動に自覚的に用いているからだ。
著者
加賀谷 紀子
出版者
弘前学院大学看護学部
雑誌
弘前学院大学看護紀要 (ISSN:18808867)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.65-71, 2013

本研究の目的は,わが国のハンセン病対策に,皇室の慈善事業と宗教団体がどのように関わったかを明らかにすることである。1931(昭和6 )年,貞明皇后の寄付金により「癩予防協会」が設立され,貞明皇后逝去後の1952(昭和27)年には貞明皇后救癩事業募金の基金をもとに「藤楓協会」に引き継がれた。また,ハンセン病と関係のある真宗大谷派光明会は,宗教と財政面の関係で皇室と深く関わりがあった。国のハンセン病対策は「絶対隔離で癩は撲滅できる」ことを国民に印象付け,大谷光明会や,皇室と関係があった日本Mission To Lepers(以下日本 MTL と称す)は皇室の救癩活動と共に国の政策に其々の役割を担っていった。皇室は財政面での支援と「救済慰安」の名の下に慈善事業を進めていくが,やがて,強大な影響力を持つ医療者の「民族浄化」の考えが大谷光明会や日本MTL の宗教団体に影響を与えていくことになる。皇室を含め其々の関わりは政治との関係において明らかになった。
著者
三上 聖治 佐藤 香里奈 柴田 有佳李 神 美智子 奈良 夏子
出版者
弘前学院大学看護学部
雑誌
弘前学院大学看護紀要 (ISSN:18808867)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.35-43, 2009

「健康日本21」に関連した厚生労働省や都道府県庁のホームページから国や地方自治体の取り組み状況を調査した結果1.ベースラインの策定となる基礎資料は,統一されていなかった。2.中間評価の方法は,暖味であり,国や地方自治体で異なっていた。3.代表値のデータは乎均値が多く統計分析として扱えるデータはほとんどなかった。4.取り組み状況が明確に示されていなかった。
著者
葛西 智賀子 岩月 すみ江
出版者
弘前学院大学
雑誌
弘前学院大学看護紀要 (ISSN:18808867)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.65-82, 2006-03-31

本研究の目的は,成人看護学実習における<選択実習>での学生の学びを明らかにすることである。<選択実習>は(1)血液透析室実習(2)土曜日・夜間診療実習(3)健康教育実習(4)ボランティア活動参加(5)闘病者・中途障害者などによる講演参加(6)大学や施設が主催する公開講座参加(7)看護系学会参加の7項目を設定した。学生64名を対象とし,(1)〜(4)は実習項目ごとに,また,実習内容の類似性から(5)〜(7)はまとめて,それぞれの実習記録から学生が学んだこと表現している文を抽出して,類似性に沿って集めカテゴリー化した。その結果,(1)血液透析室実習では【透析患者の生活の理解】など5カテゴリー,(2)土曜日・夜間診療実習では【土曜・夜間診療の役割】【患者の特徴】など4カテゴリー,(3)健康教育実習では【地域での健康教育の意義】などの3カテゴリー,(4)ボランティア活動参加では,【バリアフリーの必要性】など5カテゴリーが生成された。また,(5)闘病者・中途障害者などによる講演参加(6)大学や施設が主催する公開講座参加(7)看護系学会参加では,【様々な知識の獲得と認識の変化】などの4カテゴリーが生された。これらの結果から,<選択実習>は学生自らが看護者としてのあり方を考え問題意識を持つ機会となっていたが,<選択実習>のねらいであった成人期にある人の対象理解を深めることに効果があったのは,(2)土曜日・夜間診療実習のみであり,オリエンテーションの充実をはじめとする,<選択実習>における学習支援方法の検討と対象の精選が課題となった。