著者
川越 ゆり 滝澤 真毅
出版者
東北文教大学・東北文教大学短期大学部
雑誌
東北文教大学・東北文教大学短期大学部紀要 (ISSN:21858918)
巻号頁・発行日
no.1, pp.83-103, 2011-03

はじめに 1950年代のイギリスの子ども文化を紹介したOpie & Opie(1959)の11章には、当時の子どもの間で流行していたさまざまなジンクス(縁起かつぎ)が収録されている。章の冒頭で、著者は1852年にプリマスに在住していたある男性の回想を紹介し、男性の少年時代に流行していた「白馬を見たら3回つばをはき、つばの飛んだ方向に行けば良いことがある」というジンクスの類例が、1950年代の子ども達の間で今なお生き続けていると述べている。また、白馬のジンクスに限らず、学齢期の子どもがさまざまなジンクスにこだわる傾向にあることを、事例を挙げて報告している。では、Opie & Opie に報告されているような子どもの姿は、特定の国や時代に限られた現象なのだろうか。学際的で興味深いテーマであるにもかかわらず、子どもとジンクスとの関わりについての研究は十分になされてきたとはいえない。本論文の目的は、平成の日本で子ども時代を過ごした学生の回想データを分析し、イギリスの事例と比較することで、日本の子どものジンクスの実態の一端を明らかにすると同時に、国や時代の別を問わず、子どものジンクスに共通に見られる特性を示すことにある。