著者
川越 ゆり 滝澤 真毅
出版者
東北文教大学・東北文教大学短期大学部
雑誌
東北文教大学・東北文教大学短期大学部紀要 = Bulletin of Tohoku Bunkyo College Tohoku Bunkyo Junior College
巻号頁・発行日
vol.1, pp.83-103, 2011-03-31

はじめに 1950年代のイギリスの子ども文化を紹介したOpie & Opie(1959)の11章には、当時の子どもの間で流行していたさまざまなジンクス(縁起かつぎ)が収録されている。章の冒頭で、著者は1852年にプリマスに在住していたある男性の回想を紹介し、男性の少年時代に流行していた「白馬を見たら3回つばをはき、つばの飛んだ方向に行けば良いことがある」というジンクスの類例が、1950年代の子ども達の間で今なお生き続けていると述べている。また、白馬のジンクスに限らず、学齢期の子どもがさまざまなジンクスにこだわる傾向にあることを、事例を挙げて報告している。では、Opie & Opie に報告されているような子どもの姿は、特定の国や時代に限られた現象なのだろうか。学際的で興味深いテーマであるにもかかわらず、子どもとジンクスとの関わりについての研究は十分になされてきたとはいえない。本論文の目的は、平成の日本で子ども時代を過ごした学生の回想データを分析し、イギリスの事例と比較することで、日本の子どものジンクスの実態の一端を明らかにすると同時に、国や時代の別を問わず、子どものジンクスに共通に見られる特性を示すことにある。
著者
川越 ゆり
出版者
山形短期大学
雑誌
山形短期大学紀要 (ISSN:13477366)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.45-54, 2010-03

イギリスは古い建築物への愛着が強い国である。それは、中世の荘園領主が邸宅として建設したマナー・ハウス(manor house)が、個人の住宅のほか、スポーツ施設や宿泊施設、マンションなどの形で今なお残っていることにもよく表れている。長い歴史をもつ場所のイメージとして、マナー・ハウスはしばしばイギリスのファンタジー作品にも登場する。『時の旅人』(A Traveler in Time,1939)や『トムは真夜中の庭で』(Tom's Midnight Garden,1957)、そして、『グリーン・ノウの子どもたち』(The Childrenof Green Knowe,1954)などが好例だろう。『時の旅人』『トムは真夜中の庭で』はタイムファンタジー(以下、TF)である。『グリーン・ノウの子どもたち』はTF ではないが、「時間」をテーマにしている点は他の二作と共通している。この小論では、『グリーン・ノウの子どもたち』に、どのような時間の相が描かれているのかについて読み解くことを目的にしている。論を展開する前に、簡単に著者の紹介をしておきたい。ルーシー・ボストン(Lucy M.Boston,1892-1990)は遅咲きの作家で、60歳を過ぎてから創作活動をはじめた。全6巻に渡る「グリーン・ノウ」シリーズが代表作で、『グリーン・ノウの子どもたち』(以下、『グリーン・ノウ』)はその1巻目にあたる。シリーズの舞台になっている古い館は、ケンブリッジシャーにあるボストン自身の邸宅で、1120年に建築されたマナー・ハウスがモデルになっている。
著者
川越 ゆり 滝澤 真毅
出版者
東北文教大学・東北文教大学短期大学部
雑誌
東北文教大学・東北文教大学短期大学部紀要 (ISSN:21858918)
巻号頁・発行日
no.1, pp.83-103, 2011-03

はじめに 1950年代のイギリスの子ども文化を紹介したOpie & Opie(1959)の11章には、当時の子どもの間で流行していたさまざまなジンクス(縁起かつぎ)が収録されている。章の冒頭で、著者は1852年にプリマスに在住していたある男性の回想を紹介し、男性の少年時代に流行していた「白馬を見たら3回つばをはき、つばの飛んだ方向に行けば良いことがある」というジンクスの類例が、1950年代の子ども達の間で今なお生き続けていると述べている。また、白馬のジンクスに限らず、学齢期の子どもがさまざまなジンクスにこだわる傾向にあることを、事例を挙げて報告している。では、Opie & Opie に報告されているような子どもの姿は、特定の国や時代に限られた現象なのだろうか。学際的で興味深いテーマであるにもかかわらず、子どもとジンクスとの関わりについての研究は十分になされてきたとはいえない。本論文の目的は、平成の日本で子ども時代を過ごした学生の回想データを分析し、イギリスの事例と比較することで、日本の子どものジンクスの実態の一端を明らかにすると同時に、国や時代の別を問わず、子どものジンクスに共通に見られる特性を示すことにある。