著者
原田 宏司 千葉 潤之介
出版者
広島文化学園大学学芸学部子ども学科
雑誌
子ども学論集 (ISSN:21878145)
巻号頁・発行日
no.1, pp.15-24, 2013-04-30

各種メディアの発達により,日常生活の中でさまざまな音楽を容易に耳にするようになった。テレビで歌舞伎やAKB48 を目の当たりにし,CDでジャズを聴くかと思えば,カラオケで演歌を歌い,コンサートに出かけてマーラーの交響曲に感動する。正月になると箏曲が流れ,神社では雅楽が聞かれることも珍しくない。こうした日常の中で「音楽は国境を越える」という神話も実しやかに囁かれ,我われはきわめて恵まれた音楽環境にいるような錯覚を抱いてしまう。果たしてそうであろうか。サウンド・レヴェルでの聴取なら納得できるとしても,学校教育の現場でとり上げられる鑑賞教材にたいして,我われはどのように向き合うべきであろうか。 この小論では,音楽様式論の系譜をたどりながら,音楽教育に造詣の深いエリオットを援用しつつ,わが国の伝統音楽理解のための一つの事例を提示する。
著者
松野 実 山崎 晃
出版者
広島文化学園大学大学院教育学研究科
雑誌
子ども学論集 (ISSN:21878145)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.51-62, 2017-03-31

本研究の目的は,個人の自閉症スペクトラム傾向の高低と,ポジティブ・ネガティブな理想自己と現実自己のズレ及び情動への評価との関連を調査し,それらが自閉症スペクトラム傾向の自尊感情にどのような影響を与えているのか検討することであった。自閉症スペクトラム指数,高校生用自己概念尺度,情動への評価尺度,自尊感情尺度を大学生に実施した(N=300:男子62 名,女子238 名)。調査の結果,自閉症スペクトラム傾向の高さやポジティブな理想自己と現実自己のズレは,自尊感情の低さに影響を与えている可能性があることが示された。また,自閉症スペクトラム傾向の高い者は,自身の悲しみを否定的に捉え,悲しみの必要性を感じない傾向にあることが示された。理想自己と現実自己のズレを,ポジティブなものは小さく,ネガティブなものは大きくしていく支援方法を検討することが自閉症スペクトラム傾向の高い学生の自尊感情を高めていくうえで意義があると考えられる。