著者
Akiyo HIRAI Rie KOIZUMI
出版者
Japan Language Testing Association
雑誌
日本言語テスト学会研究紀要 (ISSN:2433006X)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.1-20, 2008-09-20 (Released:2017-08-07)
被引用文献数
1

Among different types of rating scales in scoring speaking performance, the EBB (Empirically derived, Binary-choice, Boundary-definition) scale is claimed to be easy to use and highly reliable (Turner & Upshur, 1996; 2002). However, it has been questioned whether the EBB scale can be applied to other tasks. Thus, in this study, an EBB scale was compared with an analytic scale in terms of validity, reliability, and practicality. Fifty-two EFL learners were asked to read and retell four stories in a semi-direct Story Retelling Speaking Test (SRST). Their performances were scored using these two rating scales, and then the scores were compared by using generalizability theory, a multitrait-multimethod approach, and a questionnaire delivered to the raters. As a result, the EBB scale, which consists of four criteria, was found to be more generalizable (i.e., reliable) than those of the analytic scale and generally assessed the intended constructs. However, the present EBB scale turned out to be less practical than the analytic scale due to its binary format and because it had more levels in each criterion. Further revisions seeking a better scale for the SRST are suggested.
著者
柳瀬 陽介
出版者
日本言語テスト学会
雑誌
日本言語テスト学会研究紀要 (ISSN:2433006X)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.77-95, 2008-09-20 (Released:2017-08-07)

この言語コミュニケーション力の三次元的理解は、これまでの言語コミュニケーション力論の議論の蓄積の上に、関連する諸概念を再構成したものである。もちろんただ用語を変えただけというものではなく、(a)読心力の働きの強調、(b)身体力の復活、(c)言語力における「知識」の二義性を明示した、ことが本論考の独自性の主なものである。だが、これらの論点は、これまでの言語コミュニケーション力論からは、まったく欠如していたと考えるのは行きすぎであろう。過去の言語コミュニケーション力論の諸概念と、本論文の概念をやや強引に関連づけたのがAppendix 1である。これらの改良により、本論文の「目的」で述べた、5つの課題は克服されただろうか。(1)の課題は、Bachmannの方略的能力概念よりも、言語の知識がコミュニケーションに使われる際の過程をより理論的に解明することであった。これについては、(a)の読心力の設定により、言語コミュニケーション以前に、コミュニケーションには「心の理論」に代表される他人の心を読むメカニズムが人間には働いており、ことに言語を高度に使ったコミュニケーションにおいては関連性の原理に従って言語使用がされていることを明らかにすることで課題を達成した。(2)の課題は、言語コミュニケーションにおける身体の働きを明示することであったが、これはBachman(1990)がかつて提唱していた「心身協調メカニズム」を「言語的身体力」で復活させただけでなく、「非言語的身体力」を設定することで、これまでの応用言語学が重んじていなかったが、日常生活では痛感されている領域があることを明らかにした。(3)の課題は、言語コミュニケーションの相互作用性を少しでも明らかにすることであったが、これは読心力概念を前面に出すことで、コミュニケーションの特定の相手を具体的に想定しない言語コミュニケーション力論は、コミュニケーションの理論としては不十分であることを示した。だが、これは、個人の中に他者を取り込んだ相互作用性に留まり、未だに個人主義的な発想であるともいえるかもしれない。Hymes(1972)が先駆的に述べていたコミュニケーションの「創発」(emergence)についてもまだ論考されていない。これは今後の課題となるだろう(後述)。(4)の課題は、言語の極にもコミュニケーションの極にも偏らない論考をすることだった。この課題は、読心力と言語力を独立させ直交的に表現し、その二次元平面で、ほとんど読心力だけでも成立するコミュニケーションから、高度に言語力に依拠することによって成立する言語コミュニケーションの変容範囲を理論的に示すことによって克服された。(5)の課題は言語コミュニケーション力の全体像の見通しを得る論考を目指すことであったが、これは全体像を三つの要因(三次元)という簡明な構造図式で説明し、なおかつ、それぞれの次元においてより詳しい説明が展開できる議論を展開したことによって達成されたと考えられる。このように本論文の言語コミュニケーション力の三次元的理解は、これまでの言語コミュニケーション力の展開に基づきながらも新しい独自の貢献を果たすと考える。