著者
松井 貴英 Matsui Takahide
出版者
九州国際大学現代ビジネス学会
雑誌
九州国際大学国際・経済論集 = KIU Journal of Economics and International Studies (ISSN:24338253)
巻号頁・発行日
no.7, pp.15-40, 2021-03

本論文は、1970年前後に辰巳ヨシヒロが執筆した作品に対して評されることのある「うらぶれ」「よるべのない」という評価が、1956年に執筆された『黒い吹雪』においてもなされうるかどうかを検討する。そしてこの作品から、「よるべのない」と表現されうる作風の萌芽を読み取ることができることを示す。具体的には、主要登場人物の一人であるイカサマ博奕打ちの男の「よるべのない」心のありようについて具体的に検討し解釈することによって、それが示される。