- 著者
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羽田野 直道
- 出版者
- 物性若手夏の学校準備局
- 雑誌
- 物性若手夏の学校テキスト 第67回物性若手夏の学校 (ISSN:27582159)
- 巻号頁・発行日
- pp.321-331, 2023 (Released:2023-02-07)
ハミルトニアンを非エルミートにした量子系が盛んに議論されるようになりました。本ゼミでは、非エルミート性が(1)開放量子系の有効ハミルトニアンに現れる場合、(2)系全体に現れる場合、(3)他の模型を変換して現れる場合のそれぞれについて入門的な内容を概観します。(1)はエルミート系の一部分が有効的に非エルミートになる場合です。例として、量子細線が接続された量子ドットが挙げられます。量子細線との結合のために量子ドットのエネルギーが保存しないのが非エルミート性の原因です。実験では系に測定器を結合させるため、実験系は必ず非エルミート系です。(2)では実エネルギー固有値について考えます。系全体が非エルミートでも、PT 対称性のような物理的対称性のみを課すと実固有値が得られる場合があることを示します。(3)では (d + 1) 次元の古典統計力学系から d 次元の量子力学系への変換を例に、模型の変換により非エルミートハミルトニアンが得られることをみます。
多くの理論はエルミート系を対象としています。対応する実験系を実現するためには、(1)の理由で測定が系をできるだけ乱さないように特別な注意が必要です。一方、非エルミート量子力学では最初から測定系が注目系と強く結合している場合を扱うため、将来的に実験系の実現にも変革を起こすと期待しています。