著者
野田 英明 吉田 幸苗 井上 敏宏 片岡 真 阿蘓品 治夫
出版者
国立国会図書館 関西館 図書館協力課
雑誌
カレントアウェアネス (ISSN:03878007)
巻号頁・発行日
no.307, pp.4-7, 2011-03-20
被引用文献数
1

現在、大学を始めとする教育・研究機関で提供される電子コンテンツの大半は、出版社などのベンダーと各機関との間でライセンス契約を結んでいるもので、その認証は、IPアドレスによって行われることが多い。しかし、米国情報標準化機構(NISO)のワーキンググループであるSERU(Shared Electronic Resource Understanding)がガイドラインとして示したように、一般的に教育機関に所属する学生、教職員等のユーザは、キャンパス外からでもこうしたライセンスリソースへのアクセスが認められるようになってきている。これを技術的に実現するために、VPNや、リバースプロキシなどが用いられてきた。なかでもEZproxyは、ユーザ側が特別なソフトウェアをインストールすることなく、ユーザID/パスワードによりアクセスできること、また電子コンテンツへのアクセスに特化しており、利用者コミュニティが充実していることなどから、図書館で広く使われてきた。このような状況のなか、最近、IPアドレス認証に代わり、機関が個人認証を行う技術としてShibboleth(シボレス)が注目を集めている。IPアドレスによる認証が、キャンパスという「物理的な場所」に基づいて認可を行うのに対し、Shibbolethによる認証は、アクセスする利用者の「属性」(所属部局、教員/学生など)に基づいた認可を実現している。また、キャンパスの内外を意識することなく各サービスへアクセスできること、シングルサインオン(SSO)、パーソナル機能との連携、ユーザ管理の利便性向上などのメリットもある。さらに、ライセンスリソースへのアクセス認証管理を一元化するため、英米を始めとする世界各国で、国レベルのShibbolethフェデレーションを運用する動きが広がりを見せており、日本でも国立情報学研究所(NII)を中心とした「学術認証フェデレーション」(学認:GakuNin)が立ち上がっている。また、GakuNinの運用を行うため、NIIと大学関係者により、「学認タスクフォース」が立ち上がっており、筆者らは図書館関係者としてこのタスクフォースに参加している。本稿では、Shibbolethについて国内外の動向をまとめるとともに、GakuNinの取り組みを紹介する。