著者
杉本 沢民 横山 みさと
出版者
プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会誌 = Journal of the Society of Project Management (ISSN:1345031X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.23-28, 2014-10

インフォメーションテクノロジー(IT)の発達とともに,ソフトウェア産業は大きな成長を遂げた.ほぼすべての企業が何らかの「ITシステム」を利用して業務を遂行している.これらのシステムは,業務を遂行するための機能を有することは必須であり,さらには,信頼性,使用性,保守性といった品質特性を満たすことをも求められている.しかし,この数十年間の間,ソフトウェアは品質向上において,大きな進歩を見せていない.QCDのうち,定量化しにくいという「品質」要素は軽視され続けている.その結果,システムのパフォーマンス低下によるサービス提供の遅延,システムの突然の停止による商機の損失,システムの誤作動による生命と財産への脅威などが顕在化している.企業は限られたコストの中で,いかにシステムの品質を向上させるかが大きな課題となっている.中でも,コストをかけてテストを実施したにもかかわらず,期待した効果があげられていない企業にとっては,暗中模索の状態が続いている.われわれの調査では,こういったシステムの多くは,正しいテストの実施がなされていないことに原因があると分析した.また,テスト担当者が仕様書からテストケースを作成できないということもしばしば見られることである.この論文では,静的テストの意義を振り返り,システムの「テスタビリティ」という検証項目にフォーカスし,特に上流工程で作成した要件定義書,設計仕様書などから,テスト実施へとつなげていくための方法を紹介する.