著者
山下 玲 過外 真帆 前田 柊 松山 桂 蔵並 香
出版者
東洋大学ライフデザイン学部
雑誌
ライフデザイン学紀要 = Journal of Human Life Design (ISSN:18810276)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.359-374, 2018-03

政府は2025年までに日本のスポーツ産業市場を15兆円までに拡大することを目標としている。その具体的な施策として、スポーツを「する」「みる」「ささえる」といった、スポーツ参画人口の拡大を目指している。しかし、スポーツを「する」人においては、成人の週1回以上のスポーツ実施率が42.5%にとどまり、「みる」人においても、直接現地でスポーツ観戦を行った人は、わずか24.7%という現状がある。この要因として、スポーツ環境が整備されていないことが伺える。本研究では都市公園に着目し、実施・観戦需要があるにもかかわらず把握されてこなかった、都市公園とスポーツの関係性について明らかにすることを目的とした。まず、都市公園において、「する」スポーツを取り入れた先進事例の1つであるBryant Park(アメリカ合衆国ニューヨーク州)では、スポーツプログラムの実施やスポーツ環境の提供を行うことで、地域住民が気軽にスポーツを実施できる公園づくりを行っていることが伺えた。また、「みる」スポーツとして、日本におけるプロスポーツリーグトップチームが本拠地として使用するスタジアム・アリーナに着目し、結果、対象とした全48チームの本拠地であるスタジアム・アリーナの半数以上が、都市公園内に設置されていることが明らかとなった。しかし、スタジアム・アリーナと都市公園の管理者が異なることにより生じる問題や、法による活動の制限等、弊害が生じている可能性があることも伺えた。本研究より、都市公園とスポーツは深い関係性があることが明らかとなった。今後、国民の健康づくりや感動を共有する「場」のひとつとして、スポーツを取り入れた公園づくりを行うことは、スポーツ参画人口拡大につながると考える。
著者
呉 恩恵
出版者
東洋大学ライフデザイン学部
雑誌
ライフデザイン学紀要 = Journal of Human Life Design (ISSN:18810276)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.49-76, 2018-03

韓国の精神保健福祉に関して日本では部分的に知られているが、現在に至るまでの流れや背景など全体的な紹介はされていない。本論文は、韓国の歴史、社会的背景から精神保健医療福祉の発達史や特徴をまとめたものである。 国史編集委員会の韓国史データベースから現代の精神疾患を表す「癲狂」をキーワードにして検索した結果、治療や刑事の対応に関する記録は見つかっても、公的機関や支援、取り組みについては特に記録が見つからなかった。 韓国の開花時期から日本の植民地時代、南北戦争(朝鮮戦争)を経て国外からの精神科医療やケア、医療職以外も入るようになった。しかし、戦後も経済成長が優先視され、精神障害者の人権は阻害されていた。このような状況の下でも、自主的参加型であるNGO団体精神保健研究会が設立され多様な分野の人が集まるようになった。1995年に初めて「精神保健法」が制定され、2016年の全面改正が2017年5月から施行されるようになった。世界の基準から見るとまだ課題はあるが、理念から世界の基準に近づけるよう変化が起こっている。 韓国史の文献から得られた精神疾患者への処遇や社会の変化から今後の韓国の精神保健福祉政策に関する展望を論じる。