著者
廣岡 秀一 横矢 規
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要 教育科学 (ISSN:0389925X)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.131-144, 2003

対人コミュニケーションにおける予言の自己実現とは、出会った時の初期印象から他者に好意や嫌悪を抱き、その他者に対する好意や嫌悪に符号した無意図的なコミュニケーションを行い、さらに他者はそれに相応したコミュニケーションを行う結果、その他者が当初抱いた印象通りの人物だと確証することであり、コミュニケーションの当事者がこの因果プロセスに気づいていないことにその特色がある。本研究の目的は、2つの実験によってこの対人コミュニケーションにおける予言の自己実現プロセスが再現出来るかを確認するとともに、非言語的コミュニケーションチャンネルとしての微笑がどのように2者間に作用し、自らが他者に対して抱く好意にどのような影響を反ぼすのかを検討するものである。実験Iでは2者の初対面場面を設定し、実験協力者である面接者が意図的に微笑を発し、被験者が面接者に対して抱いた印象や好意を評定させた。また、その時の被験者のコミュニケーション行動(以下CB)をVTRで記録した。実験IIでは、実験Iで記録された被験者のCBを実験Iとは別の被験者に提示し、その人物に対する印象や好意、CBの認知を評定させた。その結果、以下のようなことが確認された。微笑は他者からよりポジティブな印象や好意を抱かれる。微笑みかけられた者は微笑みかけられなかった者よりも多くの微笑やCBを行っていたと認知され、よりポジティブな印象や好意を抱かれた。以上の結果とパス解析から得られた結果より、対人コミュニケーションにおける予言の自己実現では、無意図的に発した微笑によって自らの印象や好意をよくするだけでなく、自らがもつ相手に対しての印象や好意にまで影響を及ぼしていることが確認された。論文
著者
後藤 淳子 廣岡 秀一
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要 教育科学 (ISSN:0389925X)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.145-158, 2003

本研究は、1978年に作成されたMHF-scaleを約20年後の大学生に実施することによって現代の大学生の性役割に対する認知を検討し、加えて、約20年間における大学生の性役割態度の変化を検討しようとしたものである。性役割特性語の認知構造を数量化III類を用いて検討したところ、男性性、女性性を弁別する軸と、性的なものと非性的なものを弁別する軸がみられた。また、各特性語を評価次元間の被選択率の差の検定によって、M、H、F項目のいずれと認知されているかを検討したところ、従来Masculinityとみなされていた「指導力のある」、「自己主張できる」、Feminityとされていた「言葉遺いの丁寧な」がHumanitいこ、Humanityとみなされていた「明るい」、「暖かい」、「率直な」がFeminityに移動した。これにより男女の役割が近づき、女性役割は以前よりも社会的に望ましいものへと変化したといえる。大学生の性役割態度は20年前と大きな変化は見られなかった。ただし、女性役割期待の変化に伴い、女子は女性役割を以前よりは受容できるようになってきたと考えられるが、まだまだ周囲からの役割期待との狭間で役割葛藤に陥っている傾向がみられた。また、男性役割期待は女性役割期待に比べて強固なステレオタイプが保たれており、今後は男性も性役割との間で葛藤を感じる可能性が示唆された。論文