著者
林 文俊 大橋 正夫 廣岡 秀一
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.9-25, 1983-08-20 (Released:2010-11-26)
参考文献数
46
被引用文献数
6 2

本研究では, 個々人が他者のパーソナリティを認知する際に働かせる次元の数やその意味内容を, 個別尺度法を用いて分析することを目的とした.被験者は大学生男子44名 (うち, 分析の対象としたのは33名). 各被験者は, 32名の刺激人物を個人ごとに構成された個別尺度上で評定することを求められた (調査SPR). また, 各被験者の個別尺度に含まれている特性をSD法でいうコンセプトとして扱い, それぞれを大橋ら (1973) による20対の共通尺度上で評定させた (調査TIF).調査SPRの資料より, 個人ごとに因子分析を行なった. そして, 抽出された諸因子を, 調査TIFの資料を媒介として分類・整理した. 得られた主な結果は, 次の3点である.1) 認知的複雑性の指標となる個々人の因子数は, 1~7の範囲に分布し, かなりの個人差が認められた. ただし, 人が他者のパーソナリティ認知に際して働かせる次元数としては, 最頻値として一応4次元程度を想定するのが適当であると考えられた.2) 抽出された因子の意味内容は, かなり多岐にわたっていたが, 多くは評価的色彩を帯びたものであった. また, 評価次元とは独立な形で力本性に関する因子もいくつか見いだされた.3) 個別尺度法により抽出された因子の多くは, 林 (1978a, 1978b) の提唱するパーソナリティ認知の基本3次元 (個人的親しみやすさ, 社会的望ましさ, 力本性) の枠組から分類・整理することが可能であった
著者
廣岡 秀一 横矢 規
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要 教育科学 (ISSN:0389925X)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.131-144, 2003

対人コミュニケーションにおける予言の自己実現とは、出会った時の初期印象から他者に好意や嫌悪を抱き、その他者に対する好意や嫌悪に符号した無意図的なコミュニケーションを行い、さらに他者はそれに相応したコミュニケーションを行う結果、その他者が当初抱いた印象通りの人物だと確証することであり、コミュニケーションの当事者がこの因果プロセスに気づいていないことにその特色がある。本研究の目的は、2つの実験によってこの対人コミュニケーションにおける予言の自己実現プロセスが再現出来るかを確認するとともに、非言語的コミュニケーションチャンネルとしての微笑がどのように2者間に作用し、自らが他者に対して抱く好意にどのような影響を反ぼすのかを検討するものである。実験Iでは2者の初対面場面を設定し、実験協力者である面接者が意図的に微笑を発し、被験者が面接者に対して抱いた印象や好意を評定させた。また、その時の被験者のコミュニケーション行動(以下CB)をVTRで記録した。実験IIでは、実験Iで記録された被験者のCBを実験Iとは別の被験者に提示し、その人物に対する印象や好意、CBの認知を評定させた。その結果、以下のようなことが確認された。微笑は他者からよりポジティブな印象や好意を抱かれる。微笑みかけられた者は微笑みかけられなかった者よりも多くの微笑やCBを行っていたと認知され、よりポジティブな印象や好意を抱かれた。以上の結果とパス解析から得られた結果より、対人コミュニケーションにおける予言の自己実現では、無意図的に発した微笑によって自らの印象や好意をよくするだけでなく、自らがもつ相手に対しての印象や好意にまで影響を及ぼしていることが確認された。論文
著者
湯川 隆子 清水 裕士 廣岡 秀一
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.36, pp.131-150, 2008-03

本研究の目的は、大学生におけるジェンダー特性語の認知がここ20年でどのように変わったかを検討することである。1970年代と1990年代に男女各1000人の大学生を対象に、50語のジェンダー特性語について同一の分類テストと連想テストを実施した。主な結果は以下のようであった。(1)男性あるいは女性の典型的ジェンダー特性語として分類された特性語の数は、1970年代より1990年代のほうが少なくなっていた。(2)ジェンダー特性語に対する連想反応語は、1970年代でのほうが1990年代よりも典型的なステレオタイプを表すと見られる内容が多かった。(3)近年の日本の大学生においては、ジェンダー特性語に対し、ジェンダー・ステレオタイプに沿って反応する傾向が減少してきている。
著者
織田 揮準 中西 智子 廣岡 秀一
出版者
三重大学
雑誌
三重大学教育学部附属教育実践総合センター紀要 (ISSN:13466542)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.11-20, 2003-03

平成14年度から学校週5日制度がスタートした。学校週5日制の完全実施によって、児童生徒の学校内で過ごす時間が減少し、児童生徒の生活の場が学校から家庭、地域社会へと変化する。しかし、家庭や地域社会の休校日における児童の受け入れ態勢(受け皿)の不備による学力低下、非行の低年齢化がさらに進行するのではないかと危惧する意見がある。本研究によって、学校週5日制度導入のための試行期間であった平成13年度秋に三重県下の公民館が実施した「休校日における小学校および公民館の児童向け開放の実態」に関する調査結果から、子どもの居場所として公民館がどのような機能を果たしたか、公民館開放の阻害要因は何かなどの実態が明らかにされた。本研究成果が、学校週5日制時代における地域密着型公民館のあり方を創造する話し合いや協議のきっかけとなり、その資料として役立てば幸いである。
著者
後藤 淳子 廣岡 秀一
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要 教育科学 (ISSN:0389925X)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.145-158, 2003

本研究は、1978年に作成されたMHF-scaleを約20年後の大学生に実施することによって現代の大学生の性役割に対する認知を検討し、加えて、約20年間における大学生の性役割態度の変化を検討しようとしたものである。性役割特性語の認知構造を数量化III類を用いて検討したところ、男性性、女性性を弁別する軸と、性的なものと非性的なものを弁別する軸がみられた。また、各特性語を評価次元間の被選択率の差の検定によって、M、H、F項目のいずれと認知されているかを検討したところ、従来Masculinityとみなされていた「指導力のある」、「自己主張できる」、Feminityとされていた「言葉遺いの丁寧な」がHumanitいこ、Humanityとみなされていた「明るい」、「暖かい」、「率直な」がFeminityに移動した。これにより男女の役割が近づき、女性役割は以前よりも社会的に望ましいものへと変化したといえる。大学生の性役割態度は20年前と大きな変化は見られなかった。ただし、女性役割期待の変化に伴い、女子は女性役割を以前よりは受容できるようになってきたと考えられるが、まだまだ周囲からの役割期待との狭間で役割葛藤に陥っている傾向がみられた。また、男性役割期待は女性役割期待に比べて強固なステレオタイプが保たれており、今後は男性も性役割との間で葛藤を感じる可能性が示唆された。論文
著者
吉田 俊和 Yoshida Toshikazu 安藤 直樹 Ando Naoki 元吉 忠寛 Motoyoshi Tadahiro 藤田 達雄 Fujita Tatsuo 廣岡 秀一 Hirooka Shuichi 斎藤 和志 Saito Kazushi 森 久美子 Mori Kumiko 石田 靖彦 Isida Yasuhiko 北折 充隆 Kitaori Mitutaka
出版者
名古屋大学教育学部
雑誌
名古屋大學教育學部紀要. 心理学 (ISSN:03874796)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.53-73, 1999-12-27

Social annoyance was defined as any behavior which may bother, annoy, or irritate others, usually occurring between strangers. Social annoyance is aimed solely toward fulfilling one's own personal needs, at the sacrifice of inconveniencing others. This series of studies investigated social annoyance from a cognitive perspective. Study I examined the concept through three surveys. In Surveys 1 and 2,undergraduates (N=672) responded to questionnaires which included items which dealt with their attitudes toward social annoyance. These questionnaires consisted of attitude ratings of 120 annoying behaviors, along with various personality scales (e.g., Locus of Control (Kanbara et al, 1982), Social Consciousness (Wada & Kuze, 1990)). Factor analysis of the 120 behaviors revealed two factors, labeled "deviation from rules and manners", and "inconveniencing others." These attitudes showed positive correlations with the personality variables of "respect for norms", "philanthropic values" and "moral values". Survey 3 involved undergraduates (N=417) who responded to a questionnaire which included items asking for their perception of how they think others might feel toward the 120 annoying behaviors. Results indicated that subjects perceive the annoyance that others experience exceeds what they themselves experience. In Study II, social annoyance within two specific social events, i.e. weddings and funerals, were examined. Subjects were undergraduates and graduate students (N=136,mean age=21.0), along with their mothers (N=91,mean age=49.2). The questionnaire included items which dealt with : (1) attitudes toward 12 annoying behaviors, and means of coping; (2) the degree to which they perceive themselves as a social entity versus an individual entity (Social Consideration); and (3) their perception of how society should be (Belief about Society). Factor analyses showed that Belief about Society consists of three sub-scales : regulative, symbiotic and selfish belief. Furthermore, mothers scoring high on regulative and/oo symbiotic perceived annoyance the most, while students showed a positive correlation between Social Consideration and attitude toward social annoyance. These results suggest that belief about society and social consideration are important concepts toward examining social annoyance.
著者
松本 金矢 森脇 健夫 根津 知佳子 後藤 太一郎 中西 良文 滝口 圭子 上垣 渉 廣岡 秀一 八木 規夫
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

医学教育において実践されてきたPBL教育を,教員養成学部において展開するための基礎的な研究を行った.教育周辺領域の様々な現場においてPBL教育を実践し,コンテンツの開発を行った.特に,学生・院生に旅費を支給し,大学より離れた現場でのPBL教育を実践することができた.現場での実践を大学において省察し,学生が教員からのアドバイスを受けるためのネットワークシステムとしてmoodleを用い,そのための専用サーバを立ち上げた.例えば美術教育において学内・外のデザイン製作を学生と教員が協働して手がけるなど,教科の専門性を活かした活動や教科を超えた協働活動を展開した.また,先端的な取り組みを行っている他大学研究機関・学会の調査のために,海外視察を4回,国内視察を5回行った.これらの視察では,学生・院生を引率し,他大学の学生との交流も実現した.特に,秋田大学,愛媛大学とは双方向での視察・交流を果たし,moodle上で恒常的な交流の場を設置した.PBL教育の教育効果を明らかにするために,評価方法の開発にも注力している.日本教育大学協会研究助成プロジェクト(カルロス研究会)との協働により、パフォーマンス・アセスメント(PA)を用いた評価法の開発を推進し、そのためのマニュアル作成を行った。このようなPBL教育の成果を学内外に発信・共有するために、学内で開催された4回の公開研究会と4回のボスターセッションにおいて発表し,愛媛大学・島根大学とのジョイントシンポジウムを1回開催した。また、これらの成果を学会において論文・紀要等により発表した。開発されたすべてのコンテンツはデータベース化し、専用ホームページを通して公開している。
著者
廣岡 秀一 横矢 祥代 Hirooka Shuichi Yokoya Sachiyo
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.111-120, 2006

本研究は、子どもの規範意識の実態を把握することと、日常生活に関する意識から規範意識が影響を受けている関係を探ることを目的とした。三重県内の小学生・中学生・高校生を対象に、日常生活で経験する可能性のあることがらについての社会的ルールや規則に対する認知を調査した結果、学年が上がるにつれて規範意識が低下すること、違法・暴力行為や迷惑行動に対する規範意識は、男子は学年が上がるほど低下するが、女子は中1~中2以降は低下しないということ、遊びや快楽を追求する行動に対する規範意識は女子の方が低いことを見出した。さらに、日常生活に関する意識と規範意識の関連を検討したところ、小学生は、一般的な大人にポジティブなイメージを抱いているほど規範意識が高いこと、中・高生は、大人から自分の行動を正当に評価してほしいと思っているほど規範意識が高いことが明らかになった。次に、学校で適応できていることが高い規範意識につながること、中・高生は、友人関係が良好なことが規範意識にネガティブな影響を与える可能性があること、さらに、友人関係が良好で学校に適応できていると感じていると規範意識が高いことが明らかになった。また、将来に見通しを持ち、自分の学習や社会的な活動に意味を見出していることが規範意識にポジティブな影響を与えることが明らかになった。