著者
武藤 悠未
出版者
九州大学大学院人間環境学府附属総合臨床心理センター
雑誌
九州大学総合臨床心理研究 (ISSN:21856974)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.13-23, 2014-03-27

我々はある決まった場面や状況において自分だけの特別なルールに従った行動を行うことがある。本稿ではこうした行動を「個人的規則に基づく無意味行動」と名付け,この行動の持つ心理学的意義について探索的な研究を行った。半構造化面接による調査の結果,「個人的規則に基づく無意味行動Jは「儀式的行動J,「遊戯的行動J,「習慣的な儀式的行動」,「習慣的な遊戯的行動」の4タイプに分類でき,行動のタイプによって個人にもたらす効果が異なっているということが示唆された。「個人的規則に基づく無意味行動」は,合理的に考えると無意味な行動であるが我々はこの行動が無意味であるからこそ意義を感じるのではないかということ,また,これらの行動は儀式や遊び、の性質を持っていることから,日常の中で行われるものでありながら非日常的な行動としての役割を果たしているのではないかということが考察できた。Sometimes we exhibit particular behaviors that follow our personal rules. In this paper, I have termed such behaviors as "meaningless behaviors based on personal rules." Additionally, I have conducted research on such behaviors from a psychological perspective. As a result of several pre-structured interviews, I concluded that such behaviors could be classified into four groups: "ritual behaviors," "play behaviors," "habitual ritual behaviors," and "habitual play behaviors." Moreover, I observed that each type of behavior has different effects on the person who exhibits it. "Meaningless behaviors based on personal rules" seem to be illogical actions; however, we find them significant because of their meaninglessness. Although such behaviors are observed in daily life, they have features that are similar to ritual and play; therefore, it can be suggested that they belong to the class of non-daily behaviors and play a comparable role.
著者
志方 亮介 田中 沙来人 古賀 聡 針塚 進
出版者
九州大学大学院人間環境学府附属総合臨床心理センター
雑誌
九州大学総合臨床心理研究 (ISSN:21856974)
巻号頁・発行日
no.9, pp.19-30, 2018-03-22

本研究の自的は,過剰適応に着目した青年期の適応様式と精神的健康との関連を明らかにすることであった。最初に,自己認知と反映的自己認知に着自し,青年を対象に適応様式の類型化を試みた。本研究では青年560名を対象に質問紙調査を行った。調査するにあたり過剰適応認知尺度と自己肯定感尺度を作成し実施した。過剰認知尺度について,己認知に基づく得点と反映的自己認知に基づく得点との差を算出し,クラスタ分解による類分化を行った。その結果5つの群に分類することが出来た。さらにその類型による自己肯定感の差異について検討を行った。その結果,反映的自己認知において過剰適応的であると認知しているが自己認知においては過剰適応的であると認知していない群において,充実感や自己受容,自己実現の傾向が高いことが示された。他方,自己認知において過剰適応であると認知しているほど自己肯定感が低いことが明らかになった。本研究の結果から,青年の対人関係における適応様式を検討する際には,自己認知のみならず,反映的自己認知にも着目し検討を行う有効性が示唆された。