著者
兼古 勝史
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学教育学部研究紀要 = Bulletin of the Faculty of Education, Kyoei University (ISSN:24334367)
巻号頁・発行日
no.1, pp.61-72, 2017-09

2016(平成28)年4月の熊本地震において、地元熊本市のコミュニティFM局「熊本シティエフエム(FM791)」では、本震直後に停電のため放送できない状況に陥ったが、局スタッフの努力と機転により約40分後に放送を再開し、その後「命を守るための放送」から「命を繋ぐ生活情報」「前向きに生きていくための情報」と災害からの時間や地域の実情に応じて放送内容をシフトさせつつ、レギュラー番組とCMを停止して24時間の生放送を17日間に渡って続けた。その中で実施した、リクエストによる熊本市内各小学校の「校歌」の放送は、大きな反響を得、避難生活で不安を強いられていた市民の心の支えとなったといわれる。 本研究において、震災発生直後からの熊本シティエフエムの放送・対応を振り返るとともに、同局による「校歌」のリクエスト放送とその反響について、それを可能にしたこれまでの「校区」に密着した番組作りや取り組み事例等を合わせて検討することで、災害時における地域音声放送メディアが被災者の支援に重要な役割を果たすことが明らかになった。また「校歌」という地域の聴覚的文化資源について、"時間的な音響共同体"及び"記憶としての標識音"という概念で説明できる現象の存在が示唆された。