著者
生駒 忍 Shinobu Ikoma
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 = The journal of Kyoei University (ISSN:1880859X)
巻号頁・発行日
no.13, pp.263-273, 2015

教員採用試験の教職教養を構成する分野のひとつに、教育心理がある。この教育心理は、今日の学術的な教育心理学と類似してはいるが、同一ではない。本稿はそこに含まれる、心理学の中では長い歴史を持つ分野である記憶について、近年の出題動向を検討した。平成23 年から25 年の3 年間における、教育心理分野の記憶に関する出題を収集した。これを出題年ごとに並べ、それぞれに指摘を加えた。出題内容としては、Ebbinghaus,H. およびその忘却曲線と、レミニッセンスとが多いことが明らかになった。これは、教育心理が「古典」となっていることを表している。また、表現上の不備等も多く見られた。このような傾向は、記憶に限ったことではないとも考えられ、今後検討を広げることが求められる。
著者
小川 拓
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 = The Journal of Kyoei University (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
no.15, pp.193-219, 2017-03-31

逆上がりの魅力は、「跳び上がり」ができないような高い場所でも、体位回転をさせることにより、手の届くところであれば、鉄棒の上に上がることができるというところである。人間は高いところに登ったとき、危険から身を守ることができる場合がある。小学校で、体育を教えるとき、「技」としての「逆上がり」ではなく、後者のような「危険を回避する手段」として指導していくことも大きな目的の一つになってくる。子供にとって逆上がりは、あこがれの技であり、やりたい体育技の上位に入ってくる。逆上がりができることで、体育ばかりか他の分野でも良い影響があった子供を多数見てきた。子供の「勲章」ともなりえる逆上がりを達成させ、向上意識や自己肯定感を高めたい。逆上がりができることでの子供の変容や運動力学的に見た「逆上がりの特性」、「逆上がりの効用」から「指導法」までを検証し、逆上がりの必要性や有用性を提示していきたい。
著者
田中 卓也
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 = The Journal of Kyoei University (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
no.17, pp.29-37, 2019-03-31

「スポーツする少女」は,1960 年代より少女マンガという形で誌面に登場した。『アタックNo.1』や『サインはV!』では,バレーボールを題材に少女たちに厳しい練習を行わせるとともに,恋や友情など思春期の悩みなどを展開させることになった。オイルショック以降になると,日本は高度成長期を終え,安定成長期へと移行し,多くの国民の関心は個人の多様な価値観を求めるようになった。1970 年代以降になると,少女マンガはなりをひそめ,ギャグマンガやお笑いブームなどにより衰退化していくことになった。
著者
新井 竜治
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 = The Journal of Kyoei University (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
no.17, pp.1-15, 2019-03-31

国家総動員法が施行された戦時下で開催された三越・髙島屋・白木屋の新作家具展示会の家具図は,実用家具の設計製作技術の情報共有の名目の下,洪洋社発行の『近代家具装飾資料』誌上で公開されたものであった。昭和戦前期の木材工芸界(家具産業界)を牽引した各百貨店の家具装飾部の家具図には,次のような標準化された共通点が見られた。①正投影図法の第三角法による三面図(正面図・側面図・平面図)の全部,または二面(正面図・平面図,または正面図・側面図)で描かれている。②寸法数値単位が尺寸である。③着彩はないが,木理(杢目),裂地模様などの意匠表記がある。④構造図,機能図,部品図という構造機能表記がある。
著者
宣 賢奎
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.1-18, 2010-03-31

本研究は、日本、ドイツ、韓国の3 か国における介護保険制度創設の背景、導入過程、内容などについて比較考察したものである。比較考察の結果、日本はドイツに学び、韓国はドイツと日本に学んで介護保険制度をつくりあげたことが明らかになった。そのため、3 か国の制度には類似点が多いが、自国の実情に応じた制度に修正して制度を運用しているため、相違点も多くみられた。今後、互いの制度を学び合うことによって、各国の制度の客観的な評価と見直しの材料にするとともに、3 か国の介護保険制度が介護保険の国際化に貢献することを願う。
著者
原田 清
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.67-77, 2010-03-31

ドイツ連邦議会は、「原発は予測不能な損害を生ずる決定的なリスクがあるため、誰でもがその責任を負うことができない」として、原子力発電への利用を終了させることを決めた。一方、日本は地震国で海溝型巨大地震は周期的に起こると高い確率で予測しているにもかかわらず、その震源の真上に浜岡原発を稼働させている。この両国の違いは何であろうか。日本は、国民に対する最悪のリスクを回避しようとしていない。これは、政府、電力会社、マスコミなどの組織的な国民に対する欺きである。国家が壊滅状態となることを無視し、国民への議論を退け思考の空白をつくっている。かつて日本軍が戦争を起こした組織的な倫理観の欠如のようなものであると思える。ドイツ人に比べ日本人には組織になると倫理観の欠如という不幸な体質があると考える。
著者
山田 耕生
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.107-121, 2009-03-31

本稿では、浦和レッズとその本拠地であるさいたま市浦和地域(旧浦和市)を事例に、プロサッカークラブの発足に伴う「サッカーのまち」の変遷を明らかにした。浦和地域では1960年代から70年代にかけての約20年間の地元高校サッカー部による数々の全国優勝によって「サッカーのまち」としての認識が形成された。1993年に開幕したJリーグ以降は、行政、商店街などにより、サッカーのまちづくりが進められた。2000年代に入ると、浦和レッズも本格的に地域貢献活動に取り組むようになった。このように、Jリーグ開幕時からサッカーのまちづくりが着々と進展した要因は、地域住民の「サッカーのまち」としての認識やアイデンティティがあるためである。さらに、浦和レッズの地域貢献活動は本業のサッカーの強化には繋がらないが、結果として浦和レッズがさらに地域へ受け入れられるものになり、さらには浦和地域の「サッカーのまち」づくりが一層進んでいくものと考えられる。
著者
伊藤 大河 伊藤 基晴
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 = The Journal of Kyoei University (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
no.20, pp.43-58, 2022-03-31

通常学級に「知的発達に遅れはないものの,学習面または行動面で著しい困難を示す児童生徒」が 6.5%程度在籍していると考えられる。これらの児童生徒に対して,学級全体の集団力や仲間意識,個々の集団適応力を高めることを目的に,通常学級において通級指導教室で実施しているトレーニングを活用することを検討した。教員研修における学級担任の意見をもとに特別活動の内容を抽出した結果,紙風船づくり,スティック運動,計算フラッシュ,黒板を写そう,お話ししよう,ペンシルドライブの学習プログラムが通常学級でも役に立つと評価された。その中でも特に,紙風船づくりとスティック運動を特別活動で実施することが望ましいことが示された。
著者
吉本 文子
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 = The Journal of Kyoei University (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
no.17, pp.99-113, 2019-03-31

"本稿は,「完璧」を求めるミドルクラスの母親の子育て観・その背景について,実態調査をもとに考察したものである。調査方法は,幼稚園・幼児教室に子どもを通わせている母親へのアンケート調査とインタビュー調査である。「完璧」を求める母親は,目の前の子どもの姿に立脚した子育ての目標ではなく,外部にある目標から選択し,それに向かって邁進している。そして母親自身,子育ての評価を自分への評価に重ねている。母親は,他者を排除し,自分の世界に閉じこもり,不安を抱えている。その不安を回避するために「完璧」に向かっている。このような母親の行動には母親の社会経験が影響している。そして自らのキャリアを中断していることに,母親自身が葛藤していることを示した。"
著者
田中 卓也
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.145-170, 2014-03-31

1925(大正 14)年に集英社は、老舗出版社であった小学館の「娯楽雑誌部門」として分離独立した。翌年に正式独立し、「明るく楽しい少年少女雑誌」をキャッチフレーズとして、これまでに多くの雑誌を発刊した 1)。戦後になり同誌は、おもに就学前の児童から小学校児童の男子・女子に購読されていた。誌面は戦前から存在した「小説」、「物語」のほかに、マンガ、スポーツ記事や読者投稿欄なども設けられ、読者等の多くに‶娯楽"の雰囲気を提供した。読者らが集った投稿欄は "文ちゃんクラブ" とよばれ、愛読者にも人気を博した。そこに集うことで読者らは、(編集)記者と交流を図ることや、愛読者仲間を見つけ出す機会となった。またマンガの主人公や、スポーツ選手等に憧憬し、読者等のなかには次第に"ヒーロー像"が確立されることになった。 かくして『おもしろブック』は、集英社より戦後の児童雑誌の転換期に登場し、児童読者の興味・関心が分化する流れの中で、対応することに迫られた。しかしながらテレビの放映開始、マンガの流行等大きな波が押し寄せる中で、幾度か誌面構成を変更することも余儀なくされた。しかしながら編集部は読者のことを最後まで忘れなかった。同誌は発刊後 10 数年間にわたり役割を果たし、次世代雑誌『少年ブック』にバトンを渡すことになる 2)。
著者
神末 武彦 加藤 彰
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.101-118, 2014-03-31

2011 年に宮古空港にスカイマークが低価格運賃戦略を持って就航した。それまで既存の日本トランスオーシャン航空と全日本空輸の2 つの航空会社で高留まり傾向にあった航空運賃がこれを機に下落して低運賃競争に転じ、熾烈な戦いが繰り広げられるところとなった。この地域の入域者はほぼ航空輸送に頼っており、那覇・宮古の航空路線を検証することによって、運賃の低価格化が宮古島への航空需要喚起と観光客を増加させ、それら観光客がもたらす宮古島への経済波及効果が高まり地域経済の活性化をもたらしたのかを検証することができる。スカイマークの参入により航空機を利用する人数は総体で増加したものの、宮古地域に入域者する観光客数と経済波及効果について大きく影響したとはいえない。これらを検証するため、沖縄県、宮古島市や航空会社から集めた実績や予測と担当者へのインタビューを通して、総合的に集約・分析して研究をまとめた。
著者
北島 信哉
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 = The Journal of Kyoei University (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
no.19, pp.39-53, 2021-03

本研究は,長野オリンピック開催後の剰余金である長野オリンピック記念基金の実態を「中心-周辺」論を用い,地理的条件,組織的条件,物理的条件の視点から明らかにした。研究の結果,長野オリンピック記念基金は,冬季競技の国内外競技大会開催やジュニア育成,競技力向上事業等に活用されてきた。一方で,地元住民を対象とした事業の補助金割合は,低い現状が明らかになった。スポーツ施設マネジメントの視点から,長野オリンピック記念金の助成期間は,施設運営の財政負担を軽減していた。しかしながら,現在,使用中止の競技施設も存在することから,スポーツ施設マネジメントへの課題も明らかになった。
著者
薬本 武則 Takenori Yakumoto
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 = The journal of Kyoei University (ISSN:1880859X)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.119-133, 2015-03-31

明治以降の日本での美術教育は, 西欧の教育に準じた方法を採用してきたが, 西欧の精神性を軽視した技術論重視の教育方法が, 日本人特有の精神性までも失わせてしまうのではないかと言う不安を生み出し, 再び日本の伝統文化に根ざした教育方法への強い関心を持つようになった。その時, 私は, 江戸時代後期に茶道から始まり, その後, 芸道・武道などに受け入れられ, 日本の伝統, 教育方法になった「守・破・離」があることに気づいて, それを美術教育にも転用して, まず「守」としての基本的美術意識構築のための方法として、中国の謝赫が著わし張彦遠が論述した「画の六法及び十法」に強い関心を抱いた。そこで, これらの言葉を、西洋画の言葉に慣れ親しんでいる美術関係者にも判りやすい日本語で説明することから, 新たな美術教育の道が開けるのではないかとの考えに至り「画の六法及び十法」について考察することにした。Art education in Japan after the Meiji Restoration adopted a method that followed the European educational model,but this education model only looked at technicques rather than the spirit. Consequently, the Japanese psyche was lost. As a result, Japanese people began to think more about traditional Japanese culture. I have also regained a strong interest in teaching methods rooted in traditional Japanese culture. I have noticed that the traditional Japanese education method, which is based on「 守(shu)・破(ha)・離(ri)」 can be transformed to embody Japanese art education. As a method for the basic art of building consciousness through oberservation (shu), I have a keen interest in the ‶ten methods and six codes of the image" that Shakaku, of China, discussed.Therefore, I decided to consider explaining art in easy-to-understand Japanese using the "ten methods and six codes of the image" in terms that are similiar to those used in Western painting.
著者
中村 哲也 丸山 敦史
出版者
共栄大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、産業観光における果樹産地の地域振興と都市市場開拓を目標としている。具体的には、フルーツパーク、体験型学習型観光農園、農業体験併設型道の駅、農村カフェ、郷土・地場料理体験型宿泊施設等を事例として研究を進めた。そして産地と大都市圏フィールド・リサーチと統計データを使用した実証的分析によって、地方果樹産地の自立と活性化を図った。その結果、名護パイナップルパークや弘前市りんご公園では、食農体験ができる人気施設として、都市住民と地域住民に親しまれていた。また、黒石市のりんご試験場・資料館は、地域生産者の情報交換の場として活用され、観光客も生産者の学習に貢献する施設であった。
著者
兼古 勝史
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学教育学部研究紀要 = Bulletin of the Faculty of Education, Kyoei University (ISSN:24334367)
巻号頁・発行日
no.1, pp.61-72, 2017-09

2016(平成28)年4月の熊本地震において、地元熊本市のコミュニティFM局「熊本シティエフエム(FM791)」では、本震直後に停電のため放送できない状況に陥ったが、局スタッフの努力と機転により約40分後に放送を再開し、その後「命を守るための放送」から「命を繋ぐ生活情報」「前向きに生きていくための情報」と災害からの時間や地域の実情に応じて放送内容をシフトさせつつ、レギュラー番組とCMを停止して24時間の生放送を17日間に渡って続けた。その中で実施した、リクエストによる熊本市内各小学校の「校歌」の放送は、大きな反響を得、避難生活で不安を強いられていた市民の心の支えとなったといわれる。 本研究において、震災発生直後からの熊本シティエフエムの放送・対応を振り返るとともに、同局による「校歌」のリクエスト放送とその反響について、それを可能にしたこれまでの「校区」に密着した番組作りや取り組み事例等を合わせて検討することで、災害時における地域音声放送メディアが被災者の支援に重要な役割を果たすことが明らかになった。また「校歌」という地域の聴覚的文化資源について、"時間的な音響共同体"及び"記憶としての標識音"という概念で説明できる現象の存在が示唆された。
著者
中村 哲也 丸山 敦史 矢野 佑樹
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.63-79, 2012-03-15

本稿では、葉取らず、無袋、有袋といった3 つの栽培リンゴについて、色、糖度、価格を消費者に評価してもらい、総合的に比較検討した。その結果、葉取らずの糖度、有袋の色づきの評価は非常に高かった。色づき・甘さとも評価された無袋秋星・北斗・シナノスイート等の中生種は甘さと価格の相関が、有袋ふじ・むつ等は色づきと甘さの相関が確認された。そして一般的に色づきや糖度を評価するのは高齢者や高所得者であった。さらに、品種の価格差が30 円程度ならば若干高くとも高く評価したリンゴを購入するが、100 円以上の価格差がついた場合は購入せず、有袋ふじや無袋秋星を購入する者は著しく減る結果となった。ただし、有袋ふじ・むつ、無袋秋星は、高齢者や高所得者に販売が期待でき、葉取らず・有袋といった栽培方法を上手く使い分けることで、よりよい販売環境の構築が可能になると思われる。
著者
新井 竜治
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.39-52, 2016-03-31

トーマス・チッペンデールは透視図法・投影図法という二つの異なる種類の製図法を自身の指導書に採用した。透視図は家具の全体像を顧客である貴族・紳士に伝えるためであった。対照的に、投影図は家具の詳細寸法を同業者もしくは下職の箱物家具職人に伝えるためであった。チッペンデールは投影図として平面図・正面図・側面図・断面詳細図を描いた。椅子はすべて透視図で描かれた。机・箱物家具は透視図・投影図のいずれか、もしくは両方で描かれた。
著者
小野 奈生子
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.235-254, 2012-03-15

本稿の目的は、H.Sacks の提示する「推論実行機械」という分析概念を利用して、小さき存在が〈児童〉になっていく学校的社会化過程の一端を明らかにすることにある。入学後間もない小学校1 年生の教室では、学校でのふるまい方に関して、時に冗長的にさえ感じられるほど細かい説明がなされる様子が観察される。しかしそこで教師によって提示される出来事の系列や使用される人物カテゴリーを詳細に検討・分析すると、そうした実践こそが子どもたちが〈児童〉になっていくため、つまり後の学校生活に適応し、学校の一成員となっていくための第一歩として効果的かつ不可欠なものであることが確認できる。本稿を通じて、学校における一見日常的な相互行為の積み重ねこそが学校的社会化過程を構成していることが示唆される。
著者
木村 貴紀
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.255-264, 2012-03-15

批評の立ち位置は、こと音楽に限っては微妙であるといえるだろう。それは作品なりの対象物があって、それを後追いする形で成り立つのがどの領域に於いての批評のあるべき姿なのだが、時間に不可逆的でいて、現れては消えてしまう「音」に由来する演奏会という機会にあっては、批評の対象が無形であるがために共有にはいくつもの条件を伴う。そのような状況下で表現される音楽批評であるが、それでもこの領域に於けるいくつもの役割を担うことで、音楽表現の一形態であることは論を俟たない筈なのに、それに相応しい評価を得られていない。それは西洋近代音楽という作品を、様々な解釈を以て日々「更新する」という演奏芸術の根幹の問題にも起因する。ここでは音楽批評が、健全に機能するために越えなければならないこととは何か、またそうしてどのような音楽においてどのような位置を占める音楽表現足り得るのかを追った。
著者
山田 鋭生 小野 奈生子
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 = The Journal of Kyoei University (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
no.17, pp.115-124, 2019-03-31

本稿の目的は,幼稚園における実践を「学校的社会化」という観点からとらえることにある。「就学前教育」ということばに表れるように,幼児教育は家庭における初期社会化と学校教育との間に位置するものである。事例を読み解くにあたって,本稿ではまず「第一次的社会化」と「第二次的社会化」という概念を援用し,「学校的社会化」を第二次的社会化の原初形態としてとらえる。その上で,幼稚園年少クラスにおいて撮影されたビデオデータをもとに,それが相互行為上どのような形式で生起しているのかを明らかにしている。その結果示されたのは「質問→同時多発的応答→評価」という,幼稚園児を一斉教授へ導くと考えられる相互行為形式である。