著者
尾崎 真澄 梶山 誠
出版者
千葉県水産総合研究センター
雑誌
千葉県水産総合研究センター研究報告 = Bulletin of the Chiba Prefectural Fisheries Research Center (ISSN:18810594)
巻号頁・発行日
no.3, pp.21-28, 2008-03 (Released:2011-02-04)

1)千葉県印旛沼において、1992年から2000年にナマズ人工種苗を放流し、その放流効果について、混獲率や回収率を推定した。2)放流種苗には、焼き入れやタグによる外部標識やアリザリンコンプレクソン(ALC)による内部標識を施し、北印旛沼に12,031尾、西印旛沼に29,449尾、合計41,480尾を放流した。3)放流魚の追跡調査として、漁業者から漁獲物の収集を行い、全長、体重、生殖腺重量を測定するとともに、雌雄判別やALC標識を確認した。4)漁獲物調査により、1993年から2003年に北印旛沼で155尾、西印旛沼で799尾、合計954尾のナマズを収集した。5)これらの漁獲物のうち北印旛沼で95%、西印旛沼で73%が4、5月に漁獲された。6)ナマズ放流魚の成長は、放流後2〜3年で全長500mm以上に達することが推測され、特に夏期における成長量が著しかった。7)ナマズ放流魚の成熟について、GSI値は天然魚と同様に推移し、雌のGSI値は、4月をピークにして8月にかけて降下し、漁獲時期と産卵期は一致した。8)ナマズ放流魚の混獲率は、1993年から2003年の両沼合計で、平均50.2%と高い値を示した。また、これらの混獲率は、放流尾数との間に相関関係が成り立った。9)ナマズ放流魚の回収率は、5%と推定され、混獲率の高さを考慮すると、ナマズ資源に対する漁獲率は低いことが推測された。10)ナマズ種苗放流によって期待された親魚の添加による再生産効果は、明確な漁獲増として確認できなかった。11)印旛沼におけるナマズ資源の増大には、産卵場の収容量など、親魚量以外の条件が本種の資源維持に関わっている可能性がある。