著者
渡會 涼子 安友 裕子 北川 元二
出版者
名古屋学芸大学管理栄養学部
雑誌
名古屋栄養科学雑誌 = Nagoya Journal of Nutritional Science (ISSN:21892121)
巻号頁・発行日
no.4, pp.55-65, 2018-12-25

【目的】若年女性の過度のやせは、貧血、骨粗鬆症、低体重児出産などのリスク因子となる。本研究では女子大学生を対象に健康状態、栄養摂取状況、食行動調査を実施し、低体重者の実態を明らかにするとともに、自己のボディイメージ評価による栄養摂取状況および健康状態について比較検討を行った。【方法】①健康状態については身体計測、血液検査、②栄養調査は食物摂取頻度調査法(FFQ)、③食行動は独自で作成したアンケート調査を実施した。ボディイメージはStunkard によるシルエット法を用いて検討した。【結果】管理栄養学部1 年生女子学生134名を対象とした。Staunkard のシルエット法は体格図( 1~ 9段階でスコアが高いほど体格が大きくなる)から選択してもらいボディイメージをスコアで評価する方法である。BMI による実際の体格とシルエット法によるボディイメージ評価を比較検討した。現在の自己評価によるボディイメージ・スコアは、低体重者(BMI<18.5)4.00±0.92、普通体重(18.5≦BMI<25.0)4.17±0,96、肥満者(25.0≦BMI)4.40±1.34と、低体重者と肥満者との間に有意差は認められたが、いずれもBMI=23に相当する4 点台であった。理想とするボディイメージ・スコアは平均2.93±0.63、健康的であると思うボディイメージ・スコアは平均3.49±0.59と、健康的であると思うボディイメージより、理想とするボディイメージ・スコアが有意に低かった。肥満度別に、「理想のボディイメージ」とエネルギー摂取量を比較検討したところ、低体重者、普通体重者ともに、理想のボディイメージ・スコアが低い者は、エネルギー摂取量が低く、過剰なダイエットをしている可能性が示唆された。自己のBMI による体型を正常に認識している「正常認識群」と自己のBMI による体型を実際より太っていると過大評価している「やせ願望群」で検討を行った。やせ願望群は63%であった。血圧や骨密度、血液検査成績においては、正常認識群とやせ願望群で有意差は認めなかった。エネルギー摂取量は正常認識群1,714±545 kcal、やせ願望群1,583±437 kcal とやせ願望群が少ない傾向がみられたが有意差はなかった。食品群別における主食・芋類摂取量は、やせ願望群の方が有意に低かった。【結論】ボディイメージの誤った認識が過度の痩身傾向に影響している可能性が示唆された。若年女性に対する正しいボディイメージ認識の啓発が重要であると考えられた。