著者
天野 千絵
出版者
山口県水産研究センター
雑誌
山口県水産研究センター研究報告 (ISSN:13472003)
巻号頁・発行日
no.5, pp.35-39, 2007-03

2003年12月9日、対馬海峡東水道の水深110mで白いアマダイ科の1種(標準体長359mm)が1尾、あまだい延縄漁船で漁獲された。当標本はアマダイ科の特徴を有していたが、過去に東シナ海・黄海・日本海産として分類されたアマダイ科アマダイ属5種とは、背中線が橙色である、上顎後端が眼前縁に達しない、体高が体長の35%、側線鱗数が85であるという特徴が異なっていた。本種は1960年代から1980年代にかけて東シナ海長江河口付近で漁獲され、山口県漁業者に通称「べっぴんさん」と呼ばれていた種不明のアマダイ科の1種である可能性が考えられた。
著者
河野 光久 土井 啓行 堀 成夫
出版者
山口県水産研究センター
雑誌
山口県水産研究センター研究報告 (ISSN:13472003)
巻号頁・発行日
no.9, pp.65-94, 2011-12

日本海はユーラシア大陸の東部外縁に位置する縁海で,隣接する海洋とは対馬,津軽,宗谷および間宮の4つの浅い海峡で接続している。本海域の魚類目録は沿岸のほとんどの道府県で部分的な海域ごとに作成されているものの,日本海産魚類目録として日本海の全範囲を網羅した魚類目録はわずかしかない。日本海産魚類目録として最初に報告したのは加藤で,佐渡周辺,富山湾および山陰隠岐の海域ごとの出現種,合計636種を報告している。その後,津田は原色日本海魚類図鑑を作成し,日本海産魚類として774種を記載している。最近,著者らは山口県日本海産魚類目録を作成し,山口県日本海域だけで加藤および津田の報告を上回る870種が出現したこと,および水温上昇に伴い1990年代から2000年代に熱帯・亜熱帯性魚類の出現種数が大幅に増加したことを報告している。このように日本海における魚類の出現種は津田の報告以降,水温の上昇に伴い確実に増加していることから,できるだけ最新の情報を含めて現時点での日本海の魚類相を明らかにしておくことは,今後の水温変動が日本海の魚類の分布や回遊に及ぼす影響を評価あるいは予測する上で重要であると考えられる。本研究では日本海の沿岸および各海域の主要な魚類目録および魚類相に関する資料に,著者らが作成した山口県日本海産魚類目録のを加え,日本海沿岸の全道府県を網羅する魚類目録を作成すると共に,日本海の魚類相の特徴について検討した。