著者
田中 俊男
出版者
島根大学教育学部
雑誌
島根大学教育学部紀要. 教育科学, 人文・社会科学, 自然科学 (ISSN:18808581)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.94-85, 2015-02

本稿では、小学校における長期安定教材であり、国民的童話文学とも言うべき新美南吉「ごんぎつね」を取り上げる。「ごんぎつね」本文の問題に触れた後、第一、二章では教科書と「赤い鳥」という二つの場を想定し、きつねが活躍する他の物語群との相関で「ごんぎつね」をとらえる。第三章では「ごんぎつね」のテキスト分析を試みる。まず情報伝達という観点から反復・反省と遅れの操作を見る。次に「鶴の恩返し」や南吉の他の初期作との共通点を述べ、南吉の作劇術を考察する。