著者
渡邊 貢次 高橋 裕子 森田 一三 坪井 信二 中垣 晴男 榊原 康人
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学研究報告 教育科学 (ISSN:0587260X)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.35-39, 2006-03

愛知教育大学の男子大学生306名,女子大学生411名(合計717名)を対象とし,自覚的健康と医療10科のイメージ(印象)についての調査を行った。その結果,次のようにまとめられた。1)健康状態を大変よい+ややよい+よいの合計でみると,男子約80%,女子約85%となり,女子の方が健康状態ではやや良好という自己判断を示していた。2)「痛み」のイメージでは,内科,外科,精神科,小児科,耳鼻咽喉科,歯科の6科で男女間に有意差がみられた。6科いずれも女子の方がスコア平均値は高かった。「大切さ」のイメージでは,内科,外科,整形外科,精神科,小児科,耳鼻咽喉科,皮膚科の7科で男女間に有意差がみられた。産婦人科を除いた9科において男子の方が高スコアを示した。「身近さ」のイメージでは,外科,整形外科,産婦人科,眼科,皮膚科,歯科の6科で男女間に有意差がみられた。評価については男女間で分かれた。3)健康状態と,イメージとの関連性では,男女とも「痛み」と相関がみられ,また,女子では「身近さ」とも相関がみられた。4)イメージからみた医療10科間の類縁性を検討した。男女とも共通して大きく3つのグループに分けられた。①内科・眼科グループ,②精神科・小児科・耳鼻咽喉科・皮膚科グループ,③外科・整形外科・産婦人科・歯科グループである。全体より,イメージの形成は受診経験が大きく影響しているのではないかと推察した。
著者
佐野 竹彦
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学研究報告 教育科学 (ISSN:0587260X)
巻号頁・発行日
no.34, pp.p237-248, 1985-02

本研究は,関係固定型の真偽反応形式のアナロジー推理のプロセスについて,正答表象形成モデルと関係比較モデルのデータに対する適合度を比較することを目的とした。被験者は,大学生32名であり,彼らに2種類のアナロジー推理課題(人物画アナロジー推理課題と幾何図形アナロジー推理課題)を実施した。正答表象形成モデル,関係比較モデルともに,符号化の方法,写像の有無,属性比較の方法,の3つを組合わせて,12個の下位モデルを作成した。個人データについて,各項目タイプでの各コンポーネントの実行回数を独立変数とし,反応時間を従属変数とする重回帰分析を行い,2つのモデルの各々について,最適下位モデルを同定した。4つの観点から2つのモデルを比較した結果,以下のことが明らかになった。人物画アナロジー推理課題では,正答表象形成モデルの方がデータによく適合した。正答表象形成モデルにより,31名について,最適下位モデルを同定することができ,最適下位モデルの重相関係数の中央値は,.941であった。幾何図形アナロジー推理課題でも,正答表象形成モデルの方がデータによく適合した。しかし,正答表象形成モデルにより,最適下位モデルを同定することのできた被験者は,18名にとどまった。また,最適下位モデルの重相関係数の中央値は,.844であった。以上の結果から,幾何図形アナロジー推理課題については,ここで吟味した2つのモデル以外のモデルによる吟味の必要性が議論された。
著者
佐野 竹彦
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学研究報告 教育科学 (ISSN:0587260X)
巻号頁・発行日
no.38, pp.p211-220, 1989-02
被引用文献数
1

本研究の目的は,佐野(1982,1985)が行った関係固定型の2種のアナロジー推理課題の解決プロセスについての分析結果と比較しながら,関係変動型の幾何図形アナロジー推理課題の解決プロセスについて吟味することであった。被験者は大学生,および大学院生30名であり,彼らに真偽反応形式の関係変動型の幾何図形アナロジー推理課題を実施した。解決プロセスのモデルとして,正答表象形成モデルと関係比較モデルの2つを仮定し,両モデルとも,符号化の方法,写像の有無,属性比較の方法,の3つを組み合わせて,12個の下位モデルを作成した。個人データについて,各項目タイプでの各成分の実行回数を独立変数とし,反応時間を従属変数とする重回帰分析を行い,2つのモデルの各々について,最適下位モデルを決定した。得られた結果は以下のとおりである。1.関係固定型のアナロジー推理課題の場合と同様に,関係変動型のアナロジー推理課題についても,関係比較モデルよりも正答表象形成モデルの方がデータに対する適合度が高かった。2.正答表象形成モデルによる分析結果に基づいて,佐野(1982, 1985)と本研究で用いた3種の課題を成分レベルで比較した。符号化の方法,写像の有無についての課題差は,課題を構成する刺激次元の差(分離次元が統合次元)に帰因すると考えられた。属性比較の方法については,課題差はなく,3課題ともほとんどの被験者が,すべての属性比較を中途打切り的に行っていた。3.成分の実行時間について3課題を比較した結果,符号化に要する時間では,3課題相互間に差がみられた。属性比較に要する時間は,関係固定型の課題よりも関係変動型の課題の方が長かった。