著者
新井 哲也 中野 泰志 小平 英治 草野 勉 大島 研介
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集 第8回日本ロービジョン学会学術総会/第16回視覚障害リハビリテーション研究発表大会 合同会議
巻号頁・発行日
pp.47, 2007 (Released:2008-07-07)

【目的】 ロービジョンの人達の中には、エスカレーターの乗降の際、上りと下りを間違えることがあり、重篤な事故に至るケースもある。中野ら(2006)は、晴眼者、ロービジョン者、高齢者を対象とし、実機を使用した検証実験において、ハンドレールにマークを付すことで、より遠くからエスカレーターの運動方向が判断できることを明らかにした。先行研究で用いられたマークが 菱形であったことを受け、本実験では、より効果の大きなハンドレールデザインについて検討した。 【方法】 実験参加者は晴眼者10名であり、低視力シミュレーター(Nakano et al., 2006)を用いて各々の視力を段階的に変化させた(視力条件;0.04、0.02、0.015)。マークの種類について、背景色を青、マークの色を黄に固定した上で、a)マークの形状(菱形・矢印)、b)マーク間の間隔(広い・狭い)、c)広告とマークの間隔(狭い・中間・広い・広告のみ・広告なし)の3要因を選出し、それらの組み合わせのうち7種類を検証対象とした。参加者の課題は、回転するベルトを観察し、上下いずれかの運動方向をできる限り素早く正確に判断してキー押しで答えることであった。 【結果】 正答率と反応時間を分析の対象とした。その結果、「広告のみ」および「矢印」のマーク条件では正答率が低く、反応時間は長かった。また、マークの間隔については「狭い」条件で、広告とマークの間隔については「広い」条件で高い正答率と短い反応時間を示した。以上の傾向は低視力の条件ほど顕著であった。 【結論】 矢印や広告のみでは運動方向の判断に及ぼす効果は小さく、本実験で用いた菱形のように十分な面積をもったマークを付すことが有効である。また、マークの間隔は狭い方が良く、広告を挿入する場合には、できるだけマークと広告との間隔を広げる工夫が必要である。
著者
香川 スミ子
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集 第8回日本ロービジョン学会学術総会/第16回視覚障害リハビリテーション研究発表大会 合同会議
巻号頁・発行日
pp.64, 2007 (Released:2008-07-07)

研究の目的:盲乳幼児における「物・玩具を使った遊び」の発達の様相を明らかにする。 研究の方法:視力が手動弁以下で視覚以外の身体障害がなく、知的発達が5か月から14か月時の範囲にある先天性盲乳幼児(延べ62名)を対象として、家庭における遊び内容を調査した。対象児の知的発達状態は4つの段階(1:5か月、2:8か月、3:11か月、4:14か月)に分類した。 結果と考察:対象児に見られた遊び内容は、各発達段階に至って初めて出現する遊び内容のみを取り上げて整理した。その結果、段階1では、触れた物を握り、振る、叩く行動と、触れた物を触っているという2つのカテゴリーの遊びが発現していた。段階2では、手の届く範囲の物に手を伸ばし、触る、振る、叩く行動を繰り返しており、手や腕を伸ばせば対象物があることの認知段階にある遊び内容となっていた。また、ある場所から物を取り、放し、また取る遊び、持った物で叩く遊びも発現し、新しい音や手に伝わる感覚を続行させようとする遊び内容であった。段階3では、テレビ等からの音楽、洗濯機の回る音に近づき聴き入ったりなどの確かな音源定位が確立した遊びが出現していた。 段階4では、好きな遊びするために目的的に移動し、流し台の扉の開け閉め、便座のふたの開け閉めなどの遊びが発現していた。また、皿回しなど音を創造し、音の時間的な変化を聴くなどの遊びが出現していた。以上、視覚障害乳幼児に発現する遊び内容は、視覚に障害がない乳幼児の遊びの様相と必ずしも一致しないが、遊びを通して獲得する認知発達の様相は障害がない乳幼児と異ならないことが推測された。