著者
塙 芳典 東山 正明 種本 理那 伊東 傑 西井 慎 溝口 明範 因幡 健一 杉原 奈央 和田 晃典 堀内 和樹 成松 和幸 渡辺 知佳子 高本 俊介 富田 謙吾 穂苅 量太
出版者
日本小腸学会
雑誌
日本小腸学会学術集会プログラム・抄録集 第58回日本小腸学会学術集会 (ISSN:24342912)
巻号頁・発行日
pp.36, 2020 (Released:2020-11-19)

【背景・目的】炎症性腸疾患患者(IBD)の急増の一因として食事などの環境因子が想定されている。様々な加工食品に用いられている人工甘味料は安全性が充分に検討されているものの、近年腸内細菌への影響が報告された(Nature 2014)。そこで人工甘味料の中でも特に消費量の多いアセスルファムカリウム(acesulfame potassium; ACK)が腸管免疫に及ぼす影響を検討した。【方法】生後7週C57BL/6Jマウスに水とACK(150mg/kg w/v)を8週間自由飲水させた。その後、マウスを安楽死させ、小腸を採取、組織学的スコア、各種炎症性サイトカイン、接着分子の発現を評価した。FITCデキストランを用い、小腸の透過性亢進の有無を評価した。回盲便を用いてACKによる腸内細菌叢の変化を次世代シーケンサーで解析した。生体顕微鏡下でリンパ球のマイグレーションを観察した。【結果】ACK投与群でコントロール群と比べ、HE染色を用いた組織学的スコアは有意に上昇した。またTNFα、IFNγ、IL1β、MAdCAM-1のmRNAの発現は有意に上昇し、GLP-1R、GLP-2Rの発現は有意に低下していた。ACK群で免疫組織学的にMAdCAM-1の有意な発現の増加を認めた。ACK投与により小腸粘膜の透過性は亢進していた。腸内細菌はACKの自由飲水群でdysbiosisを認めた。生体顕微鏡観察ではリンパ球のマイグレーションがACK群で有意に増加し、抗β7抗体投与で有意に低下した。【結論】人工甘味料の長期投与がdysbiosisを誘導し、接着分子発現の亢進など腸管免疫に影響を及ぼしており、人工甘味料がIBD発症の環境因子の一つである可能性が示唆された。
著者
半田 修 塩谷 昭子 福嶋 真弥 半田 有紀子 大澤 元保 村尾 高久 松本 啓志 梅垣 英次 井上 亮 内藤 裕二
出版者
日本小腸学会
雑誌
日本小腸学会学術集会プログラム・抄録集 第58回日本小腸学会学術集会 (ISSN:24342912)
巻号頁・発行日
pp.32, 2020 (Released:2020-11-19)

【背景】これまでにクローン病(CD)と腸内細菌叢との関連が報告されているが、腸内細菌叢の変化に及ぼす因子の検討は少ない。今回我々は、CD患者の腸管粘液内細菌叢と患者背景因子(罹患範囲、手術歴、腸管狭窄、生物学的製剤使用歴、アレルギーなど)について横断的に検討した。【目的】CD患者の腸内細菌叢を変化させる因子について検討する。【患者・方法】対象は、2018年5月から2020年4月までに当院を受診しブラシによる腸管粘液採取および腸内細菌叢解析に同意したCD患者および便潜血陽性で大腸内視鏡検査を施行した健常対照者。内視鏡下にブラシで採取した腸管粘液はDNAを抽出後、16srRNA遺伝子のV3-4領域を増幅してIlumina社製Miseqによりシークエンス解析を実施した。QIIMEを用いて微生物の属レベルまでの同定を行い、細菌構成比、多様性について検討した。本検討は当院倫理委員会の承認を得て行った(IRB: 3087, 3087-1, 3087-2)【結果】対象は、細菌叢解析が可能であったCD患者20例(男性14名;平均年齢45歳)健常対照者13例(男性5名;平均年齢56歳)。CD患者の臨床背景は、小腸型6例、小腸大腸型9例、大腸型4例、手術歴有5例、腸管狭窄有9例、生物学的製剤による治療歴有10例であった。CDAIは平均106.6+76.1。CD群は対照群と比較してα多様性は有意に低値であった。CDAIはα多様性と負の相関を認め、CDAI150以上の群では未満の群と比較してRuminococcus属(p<0.001)が有意に少なかった。狭窄あり群では、狭窄なし群と比較してEubacterium属が多かった(0.003)。生物学的製剤治療群ではOscillospira属(0.004)、Dialister属(0.004)、Neisseria属(<0.001)が多く、Bacteroides属(0.005)、Phascolarctobacterium属(<0.001)、Eubacterium属(<0.001)が少なかった。【結語】生物学的製剤がCD患者の腸内細菌叢に影響を及ぼすことが示唆された。