著者
大野木 宏 内藤 裕二 東村 泰希 宇野 賀津子 吉川 敏一
出版者
The Japanese Society for Complementary and Alternative Medicine
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.87-93, 2015-09-30 (Released:2015-12-25)
参考文献数
17
被引用文献数
3 4

フコイダンは褐藻類に含まれる硫酸化多糖である.われわれは,これまでに北海道函館近海に生育するガゴメ昆布のフコイダンに注目して,その化学構造を決定するとともに,動物試験やin vitro試験において免疫賦活作用を明らかにしてきた.本研究では,健常成人の免疫機能に対する有効性や安全性を評価した.30名の被験者に4週間,ガゴメ昆布フコイダンを含む食品(1日あたりフコイダンとして200 mg)またはプラセボ食品を摂取してもらい,全血液細胞におけるサイトカイン産生能の評価を行った.その結果,プラセボ食品摂取群においては摂取前後で多くのサイトカイン産生能の低下が認められたが,ガゴメ昆布フコイダン摂取群ではその低下が抑えられ,特にIFN-γやIL-2などのTh1型のサイトカインにおいてその作用が顕著であった.また,血液検査,尿検査においては臨床上問題となる症状は認められず,有害事象も認められなかった.以上の結果から,ガゴメ昆布由来フコイダンは健常者の免疫機能の低下予防や維持に有効な,安全な食品であることが示唆された.
著者
吉田 直久 内藤 裕二 小木曽 聖 廣瀬 亮平 稲田 裕 半田 修 小西 英幸 八木 信明 柳澤 昭夫 伊藤 義人
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.3810-3815, 2014 (Released:2014-11-28)
参考文献数
14

【目的】大腸内視鏡検査における高濃度ポリエチレングリコール(PEG)であるモビプレップ®の服用量減少の検討を行った.【方法】対象患者は前日に検査食,ピコスルファートナトリウム20mlを,当日はモビプレップ®1L+水0.5Lを服用した.洗浄時間,内視鏡的洗浄度,服用前後の血液検査を検討した.なお従来PEG服用123名を比較対象とした.【結果】モビプレップ®投与111名において平均洗浄時間は165±53分であり従来PEGの192±72分に比し有意に短時間であった.良好な内視鏡的洗浄度が得られた割合は右側結腸で85.8%であった.血液検査で投与後血清Cl値の有意な低下を認めた.【結語】モビプレップ®は前日の検査食,緩下剤を併用することで服用量を減量しえた.
著者
半田 修 塩谷 昭子 福嶋 真弥 半田 有紀子 大澤 元保 村尾 高久 松本 啓志 梅垣 英次 井上 亮 内藤 裕二
出版者
日本小腸学会
雑誌
日本小腸学会学術集会プログラム・抄録集 第58回日本小腸学会学術集会 (ISSN:24342912)
巻号頁・発行日
pp.32, 2020 (Released:2020-11-19)

【背景】これまでにクローン病(CD)と腸内細菌叢との関連が報告されているが、腸内細菌叢の変化に及ぼす因子の検討は少ない。今回我々は、CD患者の腸管粘液内細菌叢と患者背景因子(罹患範囲、手術歴、腸管狭窄、生物学的製剤使用歴、アレルギーなど)について横断的に検討した。【目的】CD患者の腸内細菌叢を変化させる因子について検討する。【患者・方法】対象は、2018年5月から2020年4月までに当院を受診しブラシによる腸管粘液採取および腸内細菌叢解析に同意したCD患者および便潜血陽性で大腸内視鏡検査を施行した健常対照者。内視鏡下にブラシで採取した腸管粘液はDNAを抽出後、16srRNA遺伝子のV3-4領域を増幅してIlumina社製Miseqによりシークエンス解析を実施した。QIIMEを用いて微生物の属レベルまでの同定を行い、細菌構成比、多様性について検討した。本検討は当院倫理委員会の承認を得て行った(IRB: 3087, 3087-1, 3087-2)【結果】対象は、細菌叢解析が可能であったCD患者20例(男性14名;平均年齢45歳)健常対照者13例(男性5名;平均年齢56歳)。CD患者の臨床背景は、小腸型6例、小腸大腸型9例、大腸型4例、手術歴有5例、腸管狭窄有9例、生物学的製剤による治療歴有10例であった。CDAIは平均106.6+76.1。CD群は対照群と比較してα多様性は有意に低値であった。CDAIはα多様性と負の相関を認め、CDAI150以上の群では未満の群と比較してRuminococcus属(p<0.001)が有意に少なかった。狭窄あり群では、狭窄なし群と比較してEubacterium属が多かった(0.003)。生物学的製剤治療群ではOscillospira属(0.004)、Dialister属(0.004)、Neisseria属(<0.001)が多く、Bacteroides属(0.005)、Phascolarctobacterium属(<0.001)、Eubacterium属(<0.001)が少なかった。【結語】生物学的製剤がCD患者の腸内細菌叢に影響を及ぼすことが示唆された。
著者
内藤 裕二
出版者
ファンクショナルフード学会
雑誌
Functional Food Research (ISSN:24323357)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.4-10, 2019 (Released:2020-01-01)
参考文献数
13

腸内微生物叢あるいは腸内環境が健康増進や生活習慣病の発症に密接に関与することが次第に明らかになりつつある.次世代シーケンサーや質量分析計などの計測技術の進歩は,食機能評価にも新たな方法論をもたらしつつある.腸内マイクロバイオーム研究の現状や腸内環境を標的にした研究の具体例を紹介した.
著者
西村 智子 石川 剛 内藤 裕二
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.1236-1249, 2016 (Released:2016-07-20)
参考文献数
20
被引用文献数
1

超高齢化社会を迎え嚥下機能障害が大きな臨床課題である中,平成26年の診療報酬改定で胃瘻造設(PEG;Percutaneous Endoscopic Gastrostomy)に関連して嚥下機能評価が保険算定されるようになり,消化器内視鏡医には嚥下内視鏡(VE;Videoendoscopic examination of swallowing)への関与が期待されている.本稿では喉頭内視鏡を用いた効果的なVEの実践的方法について述べる.消化器内視鏡医の役割を明確にし,手技習得のための研修体制の整備を進め,より多くの摂食嚥下機能障害症例をサポートできる充実した体制を確立する必要がある.
著者
高木 智久 吉川 敏一 内藤 裕二 吉田 憲正 古倉 聡
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

ヒト炎症性腸疾患患者(潰瘍性大腸炎・クローン病)をはじめとした炎症性疾患に対する革新的な新規治療法の開発の試みとして一酸化炭素ガス(Carbon monoxide:CO)吸入曝露装置の開発、ならびに同装置を用いたCOガス吸入療法の効果の検討をマウス実験腸炎モデルに対して行った。1,CO曝露装置は研究協力者の森田亨(東京高圧株式会社)とともに行った。その概ねの構造は1000ppmのCOガスを純空気により分割希釈することによる濃度調節法を選択し、マウスゲージを収納できるアクリル製の大型の閉鎖飼育容器に曝露する方法をとった。ガスの排気は安全性を高めるため開放系の外気に希釈廃棄することとした。この装置を用いて検討したところ持続的に安定した一定濃度のCOガス曝露が可能になり、以降の検討に耐えうるものが完成した。2,マウス実験腸炎モデルとしてTrinitrobenzesulfonic acid(TNBS)腸炎モデルを用いた。その結果、COガス曝露群では非曝露群に対して有意に病変の形成が抑制されていた。また、大腸粘膜内の好中球浸潤や炎症性サイトカイン産生もCOガス曝露群にて有意に改善を認めており、COガス曝露による抗炎症効果が確認された。3,他部位の炎症病態におけるCOガスの効果を検証するために、代表的な関節炎症モデルであるマウス関節炎モデルを用いてCOガス吸入の効果を検証した。その結果、COガスの吸入により有意に関節炎の発症が抑制された。このことより、COは腸管炎症だけでなく関節炎においても充分に抗炎症効果を発揮するものと考えられた。以上の検討から、COガスによる腸管炎症を含めた炎症病態における炎症性御効果が明らかとなった。
著者
内藤 裕二 髙木 智久 鈴木 重德 福家 暢夫
出版者
公益財団法人 腸内細菌学会
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.1-11, 2020 (Released:2020-01-31)
参考文献数
45

京都の伝統的な漬物である「すぐき」から分離された乳酸産生菌Lactobacillus brevis KB290が,ビタミンA併用投与によりマウス腸炎モデルの腸炎発症進展を抑制することを明らかにしてきた.この腸炎抑制効果には,大腸粘膜において炎症抑制的に作用するCD11c+マクロファージと炎症促進的に作用するCD103−樹状細胞の比率を増加させることが関与していた.さらに,Lactobacillus brevis KB290とβ-カロテン併用療法による下痢症状に対する有効性を検証するために,下痢型過敏性腸症候群様症状の日本人を対象としたランダム化二重盲検プラセボ対照比較試験を実施したところ,排便頻度が低下し,腹部症状による労働生産性の低下を改善した.また,糞便細菌叢の解析でBifidobacterium属が有意に増加し,Clostridium属が有意に減少することが示された.
著者
内藤 裕二 落合 淳 吉川 敏一
出版者
医学書院
雑誌
胃と腸 (ISSN:05362180)
巻号頁・発行日
vol.35, no.10, pp.1233-1238, 2000-09-25

要旨 食道アカラシアは食道体部一次蠕動波の消失,下部食道括約筋の弛緩障害を特徴とする機能的疾患である.末梢神経には抑制性の非アドレナリン非コリン(NANC)作動性神経が存在し,一酸化窒素(NO),血管作動性腸管ペプチド(VIP),カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)がNANC作動性神経のneurotransmitterとして筋弛緩や蠕動運動に関わっている.L-arginineからnNOS(神経型NO合成酵素)により合成されたNOは,直接平滑筋細胞に作用してcGMPを産生し平滑筋弛緩させ,VIPはVIPレセプターと結合してNOSを活性化し,あるいはcAMPを産生し筋弛緩を起こす.CGRPの作用機序についてはいまだ不明である.食道アカラシア症例において,nNOS含有神経細胞の減少が観察されており,NO pathwayの解明は新規治療法につながる可能性がある.
著者
吉川 敏一 内藤 裕二 近藤 元治
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.84, no.7, pp.1186-1191, 1995-07-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
11

活性酸素は脂質,蛋白,核酸など生体の多くの分子を標的とし反応する.それゆえ多彩な活性を有し,組織障害性因子として炎症,虚血,癌といった病態生理に関与し,また,バイオシグナルとして種々の生理機能の調節も行っている.活性酸素は,環境因子のみならず多くの生体内酵素系,ミトコンドリアなどより生じるが,炎症,虚血疾患においては好中球の関与が極めて重要である.スーパーオキシドとnitric oxide(NO)との相互反応も重要であり,それらが同時に生じるような場では,その微小循環系への影響,細胞障害性の二面より検討する必要がある,このような活性酸素の動態を生体における抗酸化防御機構との関連で検討することは,疾患の病態解明,治療につながる可能性がある.