著者
田中 久稔
出版者
一般社団法人 日本応用数理学会
雑誌
日本応用数理学会年会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.120, 2002

株価や為替レートなどの資産価値の変化分率が、正規分布に比べてより厚い裾野(Fat Tail)を持つことは古くから指摘されている。(Manderbrot 1963, Fema 1965)。この性質を説明するために、いままでにもいくつかのモデルが提案されてきた。それらはいずれもエージェントの行動あるいは市場の構造に特殊な仮定を追加することにより、モデルを大数の法則や中心極限定理から解放するという方針を採っているように見受けられる。<br>この論文では、非線形や局所的相互作用を持ち込まないシンプルなモデルであっても、Fat Tail 分布の再現が可能であることを示す。このモデルの本質的な仮定は、以下の二つである。:〈投資決定の独立性)多数の投資家が存在し、それぞれが他の投資家や前期の自分の決定から独立に投資決定を行う、(ワルラス型価格調整〉資産価値は、その資産に対する超過需要に比例して変化する。すなわち、t期における価格変化を&Delta;S<sub>t</sub>,超過需要ED<sub>t</sub>をとれば、Pを調整パラメーターとして&Delta;S<sub>t</sub>=<sub>P</sub>ED<sub>t</sub>となることを仮定する。したがって、この仮定から導かれるモデルは中心極限定理の支配下にあり、そのダイナミックはガウス仮定によって記述されることになる。しかしそれにもかかわらず、比較的ゆるい条件のもとで、このモデルを用いて変化率の Fat Tail分布を再現することが可能である。まず、導かれたモデルを Fokker-Plank 方程式と呼ばれる線形編微分方程式に変換することにより、価格の調整速度パラメーターがある水準を越えると価格過程の定常分布が単峰形へと変化することが証明される。次に、具体例の計算機シミュレーションにより、双峰形定常分布を持つ価格過程が、定常分布の一方の峰から他方へと頻繁に飛び移ることを観察する。ある定常状態からもう一方の定常状態へと遷移する過程において、資産価値の大きな変化率が生じ得るのである。
著者
名古屋 靖一郎
出版者
日本応用数理学会
雑誌
日本応用数理学会年会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.220-220, 2002

と辺から成るネットワーク上に,発散・勾配・回転などの差分作用素を定義し,有限体積法から自然に決まる内積上での性質を述べる.そして,これらの抽象化された内積空間の概念を使った応用として,非圧縮流体計算における発散零の部分空間の話題を中心に,(1) 圧力ポアソン方程式に対する,行列表現を経由しない共役勾配法のプログラミング法 (2) 複数の構造メッシュ系を使ったあるメッシュリファインメント技法における,圧力ポアソン方程式に対する流速圧力同時計算型共役勾配法の適用(3) 発散零基底による非圧縮性流体計算法(4) 借金返済における最小二乗問題などの話題を紹介する.