著者
藤田 裕一郎
雑誌
朝日大学留学生別科紀要 = Review of Asahi University Japanese Language & Culture Course
巻号頁・発行日
vol.15, pp.17-21, 2018-03-31

本稿では、自身の初級クラスの授業を振り返り、会話練習がより活気に溢れたものになるよう授業設計を改善し、実践した。改善点は、学習目標を明確にするため、1回の授業で扱う3つ程度の文型項目を一連の場面としてつなげ、それぞれの文型項目における練習までをワンステップとし、毎回の授業の最後に教師の前でペアで一連の会話を発表することで授業の目標を達成するようにしたことである。 本実践を1学期間行い、1)教師自身の振り返り、2)機関が実施する学習者アンケート、3)この授業設計について学習者に直接聞いたアンケートによって評価した。その結果、機関の学習者アンケートによる他教師との比較では差が見られなかった一方で、教師自身の振り返りと学習者に直接聞いたアンケートでは肯定的な意見が多く、ペアで目標を達成しようとする取り組みの中で協働やペア間の競争意識が生まれ、それが会話練習のやる気を喚起したのではないかと考えた。
著者
新井 克之
雑誌
朝日大学留学生別科紀要 = Review of Asahi University Japanese Language & Culture Course
巻号頁・発行日
vol.18, pp.11-25, 2021-03-31

日本語によるコミュニケーションの機会がほとんど存在しない環境にある日本語学習者(以下、学習者)にとっての日本語学習の意味とその効果について、ライフストーリーインタビューによる調査をおこなった。調査の結果、学習開始以前には、生まれ育った環境に対するある種の〈葛藤〉を持っていた学習者が多いことが明らかになった。彼らは、そのそれぞれの〈葛藤〉を日本語学習によって意図せずとも克服しており、日本語学習者ならではの新たな価値観を日本語や日本文化から体得していること、それが、学習者のライフコースにおいて多様な影響を与えていたことが分かった。本研究は、従来の筆記試験やOPI試験、またCan-doといった「使うための日本語学習」についての評価とは異なった角度からの学習評価であり、日本語学習の意味を再検討するものである。
著者
横山 博信
雑誌
朝日大学留学生別科紀要 = Review of Asahi University Japanese Language & Culture Course
巻号頁・発行日
vol.15, pp.3-16, 2018-03-31

本稿は、留学生別科日本語研修課程における日本事情科目「日本の歴史」指導の在り方について2016年度・2017年度の2年間の実践を整理・考察したものである。 日本語能力の未習熟な入学直後の留学生に対して、日本事情科目「日本の歴史」は抵抗が大きい授業科目である。2016年度はDVD教材を中心とした「時代順カリキュラム」による指導を実践し、2017年度は新たに「テーマ別カリキュラム」による指導を実践した。2年間の「日本の歴史」授業の教育内容と教育方法の違いと留学生の学修の違いを比較し、「テーマ別カリキュラム」による指導の有効性を明らかにしようとした。