著者
吉野 淳一
出版者
札幌医科大学保健医療学部
雑誌
札幌保健科学雑誌=Sapporo Medical University Sapporo Journal of Health Sciences = Sapporo Medical University Sapporo Journal of Health Sciences
巻号頁・発行日
no.7, pp.38-44, 2018-03

本研究では,自死で配偶者を亡くした女性の夢の中での自死者との再会についての語りと描画の作業(ナラティヴ・イメージワーク)を報告する。研究協力者は,自死した夫の登場する夢を見て,それを記憶し,そして,研究者の求めに応じてその内容を語り描写することができた。夢に現れた状況は,夢見手によって把握され,音,音感,表情について報告された。夢中では,研究協力者と自死者との言語的な対話は成立しているとは言いがたく,研究協力者の問いかけにも自死者からは明確な言語的な回答はなかった。しかし研究協力者は,夢の中での自死者のふるまいから言葉を超えたメッセージをくみとっていた。そして,語られた内容のうち印象的な場面を描画することができた。これらから,自死者の登場する夢を語り描画する作業を通して,自死遺族と自死者そして研究者のあいだで対話的な関係が維持され,メッセージの持つ意味が共同生成されていることから,ナラティヴ・イメージワークが自死遺族の作業の進展に寄与できることが示された。