著者
森 直久
出版者
札幌学院大学総合研究所 = Research Institute of Sapporo Gakuin University
雑誌
札幌学院大学心理学紀要 = Bulletin of Faculty of Psychology
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.57-71, 2018-10-31

現在の大学には,学力,意欲,集団への適応力に困難を抱える学生が少なからず存在している。本論文は,このような学生の支援を,生態心理学的アプローチによって遂行しようとするプロジェクトの構想と計画を述べる。学生たちの困難を,特定環境下で不適応的に安定した知覚−行為循環の結果ととらえる。そして適応的な知覚−行為循環を構成する適切なアフォーダンス知覚およびそれを可能にする行為を特定し,環境の整備によって適応的な知覚−行為循環を導こうとする。これが本プロジェクトの基本姿勢である。多様な特性と困難をかかえる学生集団に対して同時に,このような環境整備を実現するため,『学び合い』の実践を導入する。この実践の中で学生らは,適切な知覚−行為循環を生み出す,認知的,社会的なアフォーダンス知覚と行為調整を学習していくことが期待される。