著者
ビアルケ(當山) 千咲
出版者
母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)研究会
雑誌
母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)研究
巻号頁・発行日
no.7, pp.87-105, 2011-03-31

多言語環境に暮らす家族が子どもへの少数言語の継承を望み言語選択をしても、現実にはそれが困難である場合が少なくない。本稿は母語/継承語の保持に重要な影響を与える家庭の言語使用に焦点を当て、母語/継承語の使用を困難にする諸要因の特定を試みた。具体的には、家庭で母語/継承語を使用する生徒の低ドイツ語力が近年問題化しているドイツを取り上げ、3校の母語/継承語補習校(日本語、ポーランド語、ロシア語)の生徒を対象とする質問紙調査のデータを分析した。その結果、生徒の4分の3は高いドイツ語力をもち、半数はドイツ語力も母語/継承語力も高いこと、家庭での母語/継承語使用量は彼らの母語/継承語力と関連しているが、ドイツ語力とは関連していないことが分かった。また少数言語母語話者の親のドイツ語力が高く、その配偶者の少数言語力が低く、子どもがドイツ生まれの場合、特にドイツ語使用にシフトする傾向が明らかになった。