著者
山本 太郎
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集 水文・水資源学会2015年度研究発表会
巻号頁・発行日
pp.100061, 2015 (Released:2015-12-01)

日本近海で発生する多くの台風は,北海道に接近するまでに勢力が衰えたり進路がそれたりするため北海道では本州ほど台風被害は多くないが,近年H15年日高豪雨やH18年豪雨など台風による大雨被害が発生し,さらに道東方面の河川で台風が主要因の洪水が増加している状況もある.これらを踏まえこれまで北海道に接近または到達した台風の特徴として経路と降雨分布の傾向を調べた. 1961年以降2014年までの54年間に発生した台風について,北海道に接近した台風を抽出し接近するまでのルートと中心気圧の変化の傾向を整理した.北海道の接近した台風のうちほぼ6割の台風が日本海ルートで接近し,残りが本州縦断ルート,太平洋ルートから接近している.北海道に接近した台風のうち中心が北緯30度を気圧980hPa以下で越えた台風の北緯40度を越えたときの中心気圧を整理すると,1961年以降54年間の平均でみれば,北緯40度を越えた時の中心気圧は日本海ルートでは986hPaに対して太平洋ルートでは981hPaと低く,太平洋ルートで北海道に接近する台風は接近する台風の割合は少ないが中心気圧が低いままで接近することが多いことが示された. 北海道に接近した台風について北海道の通過コースを区分し,そのうち1991年以降に北海道に接近した台風から北緯40度を中心気圧980hPa以下で越えた台風を抽出し,アメダス降雨量を整理した.日本海寄りのコースを通過した台風では,函館や苫小牧,稚内など道南・道央・道北で降雨量が多いが,雨量としては80mm程度でそれほど多くなく50mmにも達しない程度の場合も多い.これに対して主に太平洋寄りのコースを通過した台風では帯広や釧路,北見など道東で総雨量100mmを超えることも複数回発生しており,近年北海道を通過した台風では道東が主に影響を受けていることがわかった.
著者
Pavetti Infanzon Alicia Tanaka Kenji Tanaka Shigenobu
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集 水文・水資源学会2015年度研究発表会
巻号頁・発行日
pp.100050, 2015 (Released:2015-12-01)

Changes in vegetation traits are capable of affecting the exchanges processes of momentum, heat, and moisture between the atmosphere and the surface influencing climate over different spatial en temporal scales. Paraguay had dense forest cover until 1970 but due to agricultural expansion, the country lost two thirds of its Atlantic forest. This study aims to assess the impacts of the actual land cover changes, produced in Paraguay between the years 2000 and 1990, on the climate under wet and dry conditions. For this, the meso-scale numerical prediction model CReSiBUC was used to perform two sets of simulations for November (wet setting) and July (dry setting) 2006-2012. Each of these simulation sets used different vegetation scenarios and NDVI data but kept constant all other boundary and initial conditions. Thus, the potential effects of land-use change on precipitation were modeled and the mechanisms that may drive changes in local/regional climate were studied.
著者
西山 浩司 脇水 健次
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集 水文・水資源学会2015年度研究発表会
巻号頁・発行日
pp.100056, 2015 (Released:2015-12-01)

本研究では,旧自治体が発行した郷土歴史資料に着目して,広島都市圏で起こった過去の土石流記録を掘り起し,その発生地域・時期を明らかにし,山の斜面の宅地開発地域で過去に起こった土石流災害の特徴について考察した.その結果,広島都市圏で過去の土石流災害の記録を多数見つけることができ,気圧の谷,台風に伴った豪雨で土石流が発生し,多くの犠牲者を出していることがわかった.また,広島都市圏の山の斜面で宅地開発地域が進んでいる地域でも,過去の土石流災害の記録を見つけることができた.従って,過去の災害の歴史は,地域住民が共有する災害情報として,そして,地域の災害の危険性を意識付けるために役立つと考えられる.
著者
八木 柊一朗
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集 水文・水資源学会2015年度研究発表会
巻号頁・発行日
pp.100065, 2015 (Released:2015-12-01)

近年,地球温暖化の進行に伴う局地的集中豪雨の多発や台風の強大化など,異常気象災害が地球規模で深刻化することが危惧されている.我が国でも集中豪雨による土砂災害,交通網のトラブル,浸水被害など多くの深刻な被害を受けており,極端な降水現象に対する防災対策の必要性が高まっている.また,現在では降水現象を人為的に操作する手法としてクラウド・シーディング(以降,シーディングと呼ぶ)を利用した人工降雨の研究が世界各地で行われている.シーディングとは雨粒の「種(シード)」になるものを雨雲の中に散布することで雲粒を雨粒に成長させ,人工的に雨を降らせる技術である.シーディングの研究の目的の多くは渇水や旱魃対策,水資源の確保等のために降雨を促進させるものであるが,既往研究では,積雲発達期のシーディングによる豪雨抑制効果が確認されており,シーディングの降水抑制手法としての可能性が示唆されている.そこで本研究では,積雲発生初期におけるシーディングに着目してその豪雨抑制効果について検討した.また,シーディングによる豪雨促進リスクの大小を定性的・定量的に評価するため,複数の豪雨事例についてメソ気象数値モデル(WRF)を用いて数値実験的なシミュレーションを行った.その結果,シーディングにより広範囲に強雨域が抑制されることや,時間降雨強度が抑制されることを確認することができた.さらに,全事例合計するとシーディングを行ったケース数は240ケースあり,その中で閾値を設けたとき,積算最大降水量が抑制されたケースは83ケース,促進されたケースは29ケース,1時間最大降水量が抑制されたケースは81ケース,促進されたケースは27ケースであり,積算最大降水量が抑制される可能性は約35%,促進される可能性は約12%,1時間最大降水量が抑制される可能性は約34%,促進される可能性は約11%となった.また,シーディングを行う雨雲の高度と霰の混合比に大きな差が見られ,豪雨を促進する要因の1つである可能性が示唆された.